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2020/11/03

秋の利尻島弾丸紀行(4)島一周と四大坂

■利尻島一周と四大坂
 10日朝、7時前に起床して2階の寝室から、談話室のある1階に降りる。今シーズンは、相部屋にせず個室扱い。私以外は皆まだそれぞれの寝室。トールさんと番頭さんは、近くの本宅へと昨夜のうちに戻っているので、スタッフはカナコさんだけ。
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 夜のうちに雨が降ったようで地面が濡れている。宿の正面にそびえる利尻富士は、山頂を雲で隠しているが、時間を追うごとに天気はよくなる見通し。自転車で走るのには絶好の気候となるはず。強行軍でここまでやってきた目的を果たすことができる。まずは、自転車のタイヤに空気を入れる。その後は、談話室で朝食。予め買ってあったパンを食べる。
 もう一つ天気に関する朗報があった。台風14号は、さらに日本への接近を早め、近畿地方への最接近は明日の朝との予想。日中には風が徐々に収まり、チケットを世よくした飛行機が到着する夕方の神戸の風は10m/s未満の予想。これなら大丈夫。飛行機は飛ぶ。さらに、台風はその先、南東に進路をとる見込みで、関東地方への影響は昨日の予想よりもかなり低くなった。もちろん北海道への影響はほとんどない。若い女性の旅人とその喜びを共有したいところだが、まだ談話室には出てこない。おそらくこのままお別れとなるのだろう。
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 7:40、カナコさんに見送られて出発。今日は、うみねこゲストハウスの勧めるアクティビティの中で唯一自転車を利用する「坂道チャレンジ」。島を一周しながら「利尻島四大坂」を登るもの。10年前に初めて利尻島を訪れたときに、自転車で島を一周しているが、それに四大坂が加わることでコースの厳しさが増す。
 島の一周は、当然ながら時計回り。うみねこゲストハウスがある鷲泊は12時の位置だ。まずは、自転車道を目指す。利尻町の中心集落で9時の位置の沓形と、利尻富士町の中心鷲泊集落の少し東側まで間、島の約3分の1周分を、この利尻富士利尻自転車道で走ることができる。もちろん自転車道でなくてもクルマの少ない快適な道なのだが、これからたどる鷲泊まりの東側は自転車道のハイライトと言える絶景区間なのだ。鷲泊の集落を抜け、利尻富士のすそ野をまっすぐに登っていく。この道は北麓キャンプ場があり、道沿いには、ホテル、温泉入浴施設、キャンプ場などが点在する。ホテルの前には観光バスが止まり、利用者が乗り込んでいる。昨日のグランドホテルとは別のホテルだ。
 自転車道との交差点は標高50m足らず。結構登った。この坂は、アクティビティの課題である四大坂の一つ「甘露仙水の坂」。甘露仙水は北麓キャンプ場の奥にある湧き水で、自転車では車道の突き当りであるキャンプ場の駐車場まででよい。もともと、この坂は最後にする予定だったが、ここまでの登りを無駄にしないためにもうこのままキャンプ場まで登ってしまおう。島一周の最後、自転車道でなく海沿いの道道を使えば、再びここへ登る必要はないのだ。
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 しかし、その先の登りが結構長かった。北麓キャンプ場の駐車場の標高は200mあまりなのだから、自転車道の交差点までで4分の1しか登っていない。10年前の利尻訪問では、このキャンプ場に2泊し、自転車での利尻島一周と利尻富士登山をした。キャンプ場の中の歩道をしばらく行くと甘露仙水があり、さらに道は登山道として利尻富士山頂へ続く。北麓キャンプ場は、利尻富士のメイン登山口である。10年前の利尻富士登山は、この登山口から。それだけで、標高差1500m、10時間の厳しい行程だ。うみねこゲストハウスのアクティビティは,鷲土間利口から子の登山口までの往復の歩きが加わる。さらにハードになる。それでもこの「0to0利尻山」が、うみねこゲストハウスのアクティビティの中の一番人気で、私のように「坂道チャレンジ」だけのためにやってくる旅人は珍しく、利尻富士登山にやってきたついでに自転車に乗るパターンが多いそうだ。自転車はうみねこゲストハウスでレンタルできる。坂道を登るために電動アシストサイクルも選べるのが、定福寺五大修行と違うところ。時代は進んでいるのだ。
 さて、私の自転車には電動アシストなどはない。代わりにあるのが、低めのローギア。フロントダブルなので、最大勾配24パーセントといわれる小樽の励ましの坂も足をつかずに登っている。そうして、北麓キャンプ場の駐車場に到着。10年ぶりに見る景色。
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 すぐに来た道を引き返す。下りは早い。でも長い。相当下ってようやく自転車道との交差点。自転車道に入ると今度は登り。どんどん登って、標高100mを越える。北麓キャンプ場もそうだったが、海岸よりも路面がよく濡れている。木々の影で乾きにくいということもあるだろうが、山間部の方が雨が強く降ったようだ。自転車道は尾根と谷を交互に越えるのだが、アップダウンをなくすため、谷には高い橋が架かっている。この高架は鷲泊港入出の際に海上のフェリーから見える。つまり、橋からは港や海を見下ろすことができる。谷を埋め尽くす木々は、赤や黄色に染まり始めている。背後の利尻富士は、未だ山頂を雲に隠しているが、その雲も少し小さくなっているようで出発前には見えなかった雪が見えた。昨日の夕方より白い部分が広がっている。どうやら新雪が積もったようだ。
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 そんな橋が3つ続く。このような谷をまたぐ高い橋の建設にはそれなりの費用がかかったはずだが、利用者が少ない。出会ったのは高齢男性。朝のウォーキングをする地元の人という雰囲気。自然に「おはようございます」とあいさつを交わす。
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 その自転車道は車道と交差する。姫沼へと昇る道。この道も四大坂の一つ。自転車道のピークから少し下ったものの、交差点は標高80mくらいで、姫沼が標高150mほど。ほんのひと登りだ。その姫沼へもうすぐ到着するというタイミングで観光バスに追い越された。鷲泊のホテルの前で見たあの赤い色をした宗谷交通の観光バスだ。ただし、同じバスかどうかはわからない。今年は夏の観光客が激減した反動というか、秋になってから観光客のピークを迎えているという。今日は何度も赤い観光バスを見ることになる。
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 すぐに駐車場に到着。姫沼までは遊歩道を少し歩くようだ。バスから観光客が下りるには時間がかかる。その前に静かな姫沼を見ておこう、と思ったが、既に別の観光バス(赤くない)が駐車場に止まっていた。そのバスに乗ってきたと思われる観光客とすれ違いながら遊歩道へ。まだ数人残っていたが、それでもバス2台の合間の比較的静かな姫沼に対面することができた。追い越されたバスの観光客とすれ違いながら、駐車場へ戻る。
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 自転車道との交差点まで下り、さらに自転車道も下って、道道108号線へと降りる。青空がひろがってきた。利尻富士も顔を出してきている。
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 緩やかなアップダウンを繰り返し、時折小さな集落を過ぎていく。軒には昆布が干されている。夏には、大きめの砂利を敷いた地面に寝かせて昆布を干す光景が見られるのだが、今は竿にかけて干されている。春先の函館亀田半島でも竿に干されていた。時期によって違うのだろうか、それとも土地によるものだろうか。
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 時計でいうと4時の位置、島一周の3分の1を経過した鬼脇の集落にはセイコーマートがある。10年前にも立ち寄った。うみねこゲストハウスで食べたパンだけの朝食では足りないので、ここで補給。100円のパスタとバナナだ。さあ、どこで食べようかと思いながら走り出すと、すぐに「白い恋人の丘」の案内板。この丘へ登る道も四大坂の一つ。ちょうどいい。部白い恋人の丘への分岐に駐車場があり観光バスが泊まっていた。その乗客らしき人々とすれ違いながら細い坂道を自転車で登る。軽自動車が下りてきた。上にも駐車場があるようだ。
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 白い恋人の丘は標高40mほどなのですぐに登れる。駐車場に1台の乗用車と2人の男性。バスが入れるほど道も駐車場も広くない。この丘から、オタドマリ沼越しの利尻富士が見える。南側に回ったので、雪はあまり見えない。そして振り返れば真っ青な日本海。そして、礼文島。2人の男性も車に乗り込んで去っていき、景色を独り占めだ。ベンチに腰掛けセイコーマートで買ったパスタとバナナを食す。日差しが照り付けぽかぽか。朝は濡れていた路面もすっかり乾いている。ちょうど本州の小春日和とでも言いたいような気候。でも、小春の時期、つまり旧暦の10月は、北海道の最北の島でも、本州でも変わららない。今年だとまだひと月先なのだ。
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 坂を下り、島一周を再開。島の最南端、6時の位置は、仙法志埼。灯台がある。高台から、西に開けた入り江越しに利尻富士が眺められる。その入り江には波が打ち付けている。葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を連想させる。なんていうのは大げさで、あんなに波は高くない。でも、10年前にもこんな景色を見たことを覚えている。そう、北西から西の風が吹いている。隣の礼文島も、この利尻島も、あるいは宗谷岬も風の影響を受けながら走った記憶がある。季節を問わず風が強く6~8m/sくらいの風は当たり前のようだ。。事前に気象情報で晴雨だけでなく、風のチェックもするのは自転車乗りとして当たり前のこと。この日は風速4m/sまでと、比較的風の影響がましなのだ。
 仙法志埼の海岸まで下りるとアザラシがいる。今回は高台から遠くにその姿を見るだけにして、先を急ぐ。10年前には間近でお目にかかっているからね。
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 さて、赤い観光バスに何度か追い越される。同じバスと抜きつ抜かれつしているのか、それとも別のバスなのかはわからない。また、進行方向が西から北西になると、向かい風でペダルが重い。それでも、順調に9時の位置、沓形へ。時刻は、11:30。大変順調だ。この沓形では、やることが2つ。「ラーメンを食べること」と「坂を上ること」。先に坂を上る。四大坂の中で最高、標高450mの見返台への上り坂だ。沓形集落を抜け、まずは緩やかな裾野を利尻富士に向けてまっすぐに上る。染まりつつある木々の間に正面にはとがった山頂が見える。センターラインが引かれた道路だったのだが、途中でいきなり細い道へと切り替わる。道が細くなるポイントで、1台のクルマが止まっていた。直前で私を追い越した普通乗用車だ。道の細さに二の足を踏んでいるのだろうか。確かにこの先、細く曲がりくねった急な坂道に劇的に変化するけれど、観光バスだって通る道。いや、そのことを示す「大型バス運行中」の看板を見て怖気づいているのか。確かに、観光バスに出会ったら、すれ違いはできない。普通乗用車同士でも厳しい。
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 そんなクルマの脇を抜け、私は急な登りに取り掛かる。もちろん、自転車だって観光バスに出会うと厄介だ。でも、大丈夫。バスは来ない。今は麓のどこかでお昼ご飯の時間帯だ。
 急坂を上っていくと、沓形登山口。利尻富士への登山道入り口。北麓キャンプ場の鷲泊登山口よりも高くまでクルマで登れるわけだが、登山道が険しく一般向けではないので、鷲泊の方がメインで、こちらの登山道はマイナーだ。
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 その登山口を越えるとすぐに、広い駐車場に出た。誰もいない。先ほどのクルマも登ってこなかった。見返台へは、さらに遊歩道を登る。この遊歩道、アスファルトで固められた階段なのだが、かなり急勾配。水平な段であるはずの踏面(ふみずら)も、登り勾配になっている。
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 それを登ること5分ほど、展望台に到着。雪を頂き白く、そして鋭い利尻富士の山頂、そしてその反対側には日本海、さらに礼文島。空気が澄んで礼文島が近く見える。香深港あたりの建物も確認できる。また、麓の沓形集落や沓形港も見える。
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 景色を堪能したら下る。遊歩道の下りに注意が必要。傾斜したアスファルトの踏面は、ビンディングのクリートがよく滑る。手すりに頼りながら慎重に下る。
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 自転車にまたがったら、対向車に気を付けて下る。おそらく誰も来ないだろうけど、もし出合頭にぶつかったら痛い目に合うのはこちらだ。まあ、予想通り誰も登ってこなかったけど。
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 さあ下り切って、12:40。いい時間だ。小さな沓形の集落だからすぐ見つかるだろうと思ったが見つからず、いつの間にやら沓形岬へ。まあ、ここも立ち寄るべきポイントだ。10年前は、少し内陸の自転車道へと入り込んだので集落も岬も通らなかった。結局スマートフォンの地図を見てたどり着いた「利尻らーめん味楽」。利尻昆布でとった出汁が自慢の、ラーメンはミシュランガイドにも掲載されている。北の果ての離島に位置し、営業時間は11:30~14:00と昼のみで、なかなか食べるのが難しいラーメン。関東地方に住んでいれば、横浜ラーメン博物館で食べられるのだが、やはり本店で食べる方が値打ちがある。ちなみに前回は、沓形付近を通過したのは夕方だったし、そもそも味楽の存在を知らなかった。店に入ったのは、13時少し前。夏には行列ができる店だが、今は地元の人のみ。そして混雑が落ち着いた時間だ。店内は、イスとテーブルが並ぶ普通のラーメン店の雰囲気の部屋と、その奥の座敷の部屋。土間は地元民らしき人が食べている最中。奥の座敷に案内される。もともとは土間だけで営業していたが、有名になって旅行者も訪れるようになり、本来は居住空間であった座敷にも客を入れるようになったということかもしれない。手前には一人の客がいたので、ソーシャルディスタンスをとって一番奥の床の間の手前に座る。そして看板商品の焦がし醤油ラーメンの大盛を注文。混雑のピークは過ぎていて、すぐにラーメンが出てきた。何かしらの特徴があるわけではない、普通のラーメン。もちろん、美味しい。わざわざこんな最果てまで食べに来るほどではない、なんていう人もいる。でも、旨いラーメンを求めて北へ南へ駆け巡る旅があってもいいじゃあないの。
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 さて、ラーメンも食べたし四大坂も終わったし、あとはうみねこゲストハウスへ戻るだけ。残り約14kmのラストラン。進行方向は北から徐々に東へ。風は徐々に背中を押すようになり自然にラストスパートがかかる。
 沓形と鷲泊の二大中心街の間には、あまり集落はない。道道もこの区間だけ105号線と番号が少し若返る。広大な裾野から天を指す山頂まで、利尻富士の全貌を右に眺めながら進んでいく。広い駐車場がいくつかある。10年前は、ここにスーパーカブを止めて、自転車で島を一周した。さらに、利尻空港と広い敷地を利用した施設が続く。北国グランドホテルの高い建物が見えてきた。鷲泊のランドマークだ。セイコーマートで食べ物と飲み物を買って、14:30、うみねこゲストハウスへ。
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 距離約80km、獲得標高は推定で800m。ちなみにGPSレシーバーの計測ではプラスマイナス1500mかなり誤差が多いと思われる。いずれにせよ、四大坂が加わった利尻島一周はちょうど丹後半島一周と同じくらいのコースとなる。

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