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2020/11/04

秋の利尻島弾丸紀行(5)帰路

■最北からの帰路
 うみねこスタッフ不在のゲストハウスだが、玄関が開け放たれていて本日宿泊の旅人の男性が出たり入ったりしている。「受け付けは16時から」と玄関のカウンターに表示がある。談話室に入り込んでもよさそうな雰囲気だが、日差しが気持ちいいので玄関先のベンチこしかけ、目の前の船着き場の漁師さんの作業と、そのはるか奥の利尻富士を眺めながら過ごす。山頂の新雪は、今日一日でかなりとけた。旅人の男性は、玄関の荷物置き場にザックを残してどこかに行った。
 15時過ぎに、カナコさんがクルマで到着し「早かったですね」。フェリーの時間から逆算して「16時までに戻ります」と言って出発したのだった。まあ、16時までに戻ったことに違いはないが。「何日も滞在しても眺められない人もいるのに、一泊でこんなにきれいに利尻富士を眺められるなんてラッキーですね」と言われたが、もちろんそれには可能な限りの調整の努力をしているのですよ。天気を変えることはできないが、選ぶことはできる。でも、最後は運を天に任せるしかないのだけれど。
 利尻富士をバックに自転車とともに記念撮影をしてもらい、談話室で四大坂達成者の一覧に名前とコメントを書き加えさせてもらう。そして、記念品のプレートを頂戴する。プレートは、倒木を材料としたトールさん手作りのものだ。これが欲しくてここまで来たんだよ。
 カナコさんに、定福寺五大修行のことを尋ねたが、「知らない」とのこと。前に「蘇った五大修行」などとかいたが、「うみねこオリジナル」が事実だと書いておく。
 そしてもう一つ気になっていたことを尋ねる。帰りの交通手段を気にしていた若い女性の旅人がどうしたかということ。今朝、稚内発羽田行きの本日の航空便のチケットが確保できたとのことで、急いでフェリーに乗り込んでいったとのこと。急展開だが、無事帰れることになってよかった。こちらも、明日の飛行機は大丈夫そうだ。
 さて、こちらも帰り支度だ。時間に余裕のある今のうちに自転車をたたんでばらしてキャリーケースに収める。フェリー乗り場までの数百メートルの距離は、歩いて行こう。ぎりぎりまでベンチで過ごし、16時過ぎに、フェリー乗り場へと歩き出す。輪行袋を担いで歩くにはやや遠いが、ころころキャスターがあれば問題ない。少し歩いたところで、背後から「行ってらっしゃーい」と声がかかる。トールさんや番頭さんのうみねこスタッフがそろったようだ。手を振り返す。
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 完成車なら自転車の料金が発生するところだが、キャリーケースに入れてあるので人間のみのチケットを自動販売機で購入。ちょうど乗客が乗り込み始めたところだ。雑魚寝スペースにキャリーケースを置いて、甲板に出る。私一人の為にうみねこゲストハウスのスタッフがお見送りをしてくれる。16:40、本日の最終便が鷲泊港を出港。ほぼ同時に、うみねこゲストハウスからスタッフの皆さんが出てきた。礼文島の桃岩荘のように船べりに集まってのお見送りではなく、少し離れた桟橋から旗を振ってくれる。こちらも手を振って応える。桃岩荘のように大声で「行ってらっしゃーい」「行ってきまーす」の応酬はないが、お互いが見えなくなるまで旗と手を振り続けた。
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 さて、お見送りのスタッフが見えなくなったら、次は夕日だ。昨日に続いて、今日は海上から見る夕日。うみねこゲストハウスの裏山、ペシ岬に沈みかけた夕日は、フェリーの進行に伴い最終的には利尻と礼文の間の水平線に沈んだ。さあ、船室で休もう。
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 1時間半ほどの転寝しているとフェリーは稚内港に着岸。すっかり日が暮れて、空気が冷たい。自転車を準備して、今宵の宿へ向かう。国道40号を避け、港湾道路を南下。JR南稚内駅に近い「みどり湯」へ。その名前の通り、本業は銭湯。ライダーハウスとしても知られている。そのライダーハウスはすでに今シーズンの営業を終えているが、ゲストハウスは通年営業。そのゲストハウスは、普通の住宅の二階の一室。銭湯経営者の本宅の空き部屋を開放している、という感じ。夜になってからの飛び込みの客も受け入れるとのことで、だから急に相部屋になるかもしれない、と言われた。でも、このシーズンオフに夜になっても宿を決めずにさまよう旅人などいないだろう、という予想通りTVのある個室で自分の家にいるように過ごした。夕食は、少し離れているが国道沿いの「ラーメン山岡家」。また、銭湯で久しぶりに湯船につかる。今年は感染症対策でシャワーのみ、という宿が多い。
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 10日、5:40起床。軽く朝食をとり、6:10出発。昨夜のうちに自転車を収めておいたキャリーバッグを引きずって、国道40号線までの約700mを歩く。最寄りの乗り場、大黒3丁目バス停は、セイコーマートのすぐ前。お茶を買って、バスを待ち受ける。6:30に、始発の稚内駅前を出発したバスの席は8割方埋まっている。もう窓際はあいていないかと思ったら、一つだけ空席があった。それも日本海に面した右側。これで、昨日一日を共に過ごした利尻富士と最後のお別れができる。そこが開いていた理由は、トイレのすぐ後ろの席だから。少し足元が狭いのだ。稚内市内の乗り場でもう一人乗車したが、もう中央の席しか空いていなかった。
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 この日は土曜日。また、始発から乗っていないので降車時までわからなかったが、床下のトランクに荷物を預けていた人はあまりいなかった。あくまで推測だが、稚内市内及びその周辺の人々が土日を利用して札幌へ出かける、というパターンが多いと思われる。人の密度が高い状態で6時間を過ごさねばならないことは不安材料。対して、この日の時点で稚内市にはまだ感染者は確認されておらず(この数日後に1人の陽性が確認された)、宗谷支庁全体でもわずかであることが安心材料。シーズンオフだから混まないだろうと想定していたが、公共交通機関を使うとこういうこともありうるのだ。だからといって、乗らないわけにはいかない。車内ではみなマスクを着用して、ほとんど無言だったことも、安心材料に追加する。
 薄く雲はかかっているが、本日も穏やかな空模様で、無事利尻富士の姿を見てお別れすることができた。往路ではあまり気付かなかったが、車窓の風景が秋色に染まりつつある。もしかするとこの数日の冷え込みで、色づいたのかもしれない。ただし、300kmもの距離を南下すると、少し季節が逆戻りしていった。天売や焼尻は浮島現象。蜃気楼の一種で水平線から浮いて見える。冷え込んでいるときに見られる。
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 11:50、定刻よりも30分も早くバスは札幌駅前に到着。札幌駅の周辺で昼ご飯かと考えていたが、人が多く大荷物を持ってうろつくのが厄介だ。もう新千歳空港まで移動してしまおう。そう思って歩いていたが、駅前広場で何かが始まろうとしている。テレビの撮影のような大きなカメラが、特設ステージを狙っている。某政党の党首がここで、公開記者会見を行うのだそうだ。政治家といっても、タレントや俳優としても活動していた人物なので、要するに半分芸能人めあての人だかりができているといってもいい。時間があるのでその人物の登場を待ち、少しだけ話を聞く。一方的に話をするのでなく、聴衆から質問を募りそれにこたえるという形だった。2人目の質問への受け答えまで聞いて、その場を去る。新千歳空港行きの快速は、札幌からしばらくはそれなりに乗客がいたが、空港に着くころには車両に1人か2人ののんびりムード。
 空港に着いたら、何はともあれ大荷物を預けてしまおう。秤に乗せるとやはり20kgを少し超えている。工具を客室に持ち込もうとするとまた検査で引っかかるので、衣類など軽いものを取り出してもなかなかキャリーバッグは20kgを下回らない。それでもどうにか、調整完了。受託手荷物は、一発で検査クリア。機内持ち込みの荷物は、1つだけだが、ショルダーバッグは身の回りのもの、として別扱いなのでフロントバッグもキャリーバッグから持ち出している。でも、ずいぶん身軽になった。
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 とりあえずレストラン街へ。数軒が軒を連ねる「ラーメン道場」へ。想像通りちょっとお高め。ラーメンの次はお土産。空港以外での税込み価格が、ここでは外税。何となく二重に消費税をとられた気分。
 することがなくなったので、まだ時間はあるけど搭乗口へと向かおう。緊張のボディチェックだ。手荷物は一OK。ところが、ビンディングシューズのクリートが金属だからスリッパに履き替えたいのだが、まずそのままゲートをくぐるように促される。当然アラートが鳴る。そしてようやくスリッパを差し出される。
 搭乗口近くの待合エリアで搭乗の案内を待つ。乗り込む飛行機は少し離れた場所に駐機しているとのことで、バスで移動。そして機内へ。
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 往路は地上スタッフの窓口でチェックインしたのだが、この復路では機械での自動チェックイン。私は指定通り窓際の席に当たっているが、一つ空いて通路側にも別の乗客が一人。ところが、1ブロック3席が丸々あいたところもあり、客室乗務員がそれを調整。結局、通路側の乗客は、別のブロックの窓際へと移っていった。結局往路と同じく、1ブロックに一組の配置。この密度なら感染症のリスクは低い。搭乗時間も2時間弱。稚内・札幌間のバスの3分の1だ。
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 15:45、新千歳空港を離陸。これは、数少ない飛行機の搭乗経験の中で、一番楽しいフライトだった。今まではほとんどが夜間で景色が見えなかった。一度だけ、北海道への団体旅行で昼間のフライトがあったが、窓際ではなかった。まずは、畑や牧草地から苫小牧付近の海岸へ。すぐに高度が上がり雲の中。そして雲の上に出ると、一面の雲海。傾いた日差しが、雲の凹凸を際立たせる。
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 地上は見えない。今どこだろう。GPSレシーバーを取り出し、起動する。窓は小さいが、思いのほか乾度良好。空中にいると周囲に障害物がないからだろうか。佐渡沖だった。高度12,000m、速度700km/hくらいだ。越前岬を気を過ぎ、若狭湾に入ったら着陸準備。高度が下がっていく。大浦半島博打岬から舞鶴湾の入り口を横切り、由良川の流域を遡る。福知山盆地からは竹田川を遡り、日本一低い中央分水界を越えて、加古川流域へ。後はその加古川に沿ってを下っていく。播磨平野上空で下界が雲の間に覘くようになり、やがて雲の下に出た。ゴルフ場とため池が多いが、瀬戸内海が近づくと市街地が広がる。街明かり灯り始めている。加古川河口で瀬戸内海に出たら左に旋回。南西から東に進路を変える。進行方向左側の窓際にいるので、旋回すると地上がよく見える。後、台風の風もあって揺れながら飛んでいる。地上付近では10m/s未満でも、上空はもっと強いはず。明石海峡大橋を越えて、六甲連山の西の端が見えてきた。六甲山中まで宅地が造成された様子がよくわかる。そして、神戸空港の滑走路へ着陸。ああ、楽しかった。
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 シートベルト着用のサインが消灯するやいなや、席を立ち前方の出入り口に向けて行列が出来上がる。出入り口が開くまで座って待った方が楽なのに。それに、早く降りても受託手荷物を待たねばならないし。
 受託手荷物の自転車のキャリーバッグは、例によってベルトコンベアでは出てこない。人が運んでくる。往路では細くか弱いベルトを持って運ばれたので、復路では予防線として稚内で買った荷造りベルトをキャリーバッグに巻いておいた。けれどもそれではなく、両肩の太いベルトを両手で持って運ばれてきた。まあ、太いベルトなら大丈夫だろう。ということで、ちゃんとキャリーバッグは今回仕事をしてくれた。制限区域を出る前に駐車料金の精算。これをしておかないと搭乗者割引がきかない。本当は、搭乗前にするべきだったが、荷物チェックのドタバタで忘れていた。だから制限区域を出る前のラストチャンスにかけていたのだ。
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 ところで、着陸直前の機内放送で「神戸空港の天候は曇り、気温25度」。25度!夏日ではないか。それも夕暮れ時なのに。実際空港の外に出ると風が生ぬるい。駐車場のクルマに着いたら、慌ててきている服を何枚か脱ぐ。
 夕暮れの神戸市内の混雑を心配したが、市街地走行はわずか。六甲山中に向かう道はクルマが列をなしているが、信号がほとんどないので流れはよい。夕食は、また三田でラーメン。
 朝は、稚内にいたのに夜には帰宅できたよ。あ、タブレット端末がない。

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コメント

 電撃旅行みたいですが、楽しんで来られたみたいでなによりです。
 利尻島と礼文島の違いはどんなところにあるのでしょう?山のあるなし以外は何も知りません。

投稿: すう | 2020/11/17 20:47

 個人的には、桃岩荘ユースホステルに泊まるかうみねこゲストハウスに泊まるかが礼文と利尻の違い。過去には礼文を訪れた回数が圧倒的に多いのは、うみねこゲストハウスがまだできてなかったから。
 一般的には、礼文は花の浮島と呼ばれ、たくさんの高山植物に出会えることが観光のウリですね。

投稿: はいかい | 2020/11/19 21:59

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