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2020/02/27

氷ノ山のロングスノーハイク(戸倉峠-三ノ丸-坂ノ谷)

 2月最後の土日は、天皇誕生日と重なり三連休。連休初日は雨。二日目は雪。そして、最終日は快晴。ほぼ毎年、一緒に氷ノ山を滑っているすうさんもOKとのこと。天気、休日、同行者のスケジュールがうまく一致したのはいいのだが、足りないのは雪の量。いつも上りに利用しているわかさ氷ノ山スキー場のリフトは、先週の寒波によりどうにか全線復活。しかし、連休初日の雨のせいか、北西の季節風の影響か、翌目には頂上のリフトが停止。さあ、どうしようか。
 連休最終日の朝7時。養父市大屋町ですうさんと待ち合わせ。そして作戦会議。動くかどうかわからにリフトを当てにせず、真っ向から自分の足だけで挑む。戸倉峠から兵庫・鳥取の県境尾根を上り、坂ノ谷コースを滑ることに決定。
 大屋町から若杉峠を越える。若杉高原大屋スキー場のゲレンデは真っ白。でも営業はしていない。今シーズンは何日営業できたのだろうか。峠付近の道路脇には、昨日のものと思われる新しい純白の雪がちらほら見られる。
 波賀町の道谷集落は、この時期通るといつも雪に埋もれているのだが、今年はやはり雪が少ない。1週間ほどしか営業できなかったばんしゅう戸倉スノーパークの脇を抜け、ヤマメ茶屋のある坂ノ谷林道分岐へ。ここが下山口。自転車を置いておく。そして登山口である戸倉峠までは1.5km、標高差70m。
 県境のトンネル手前のパーキングスペースには先客のクルマが4台ほど。登山か渓流釣りかと思いながら出発準備を整えていると、そのうちの2台から2人組と単独の2組が共に登山装備で出発していった。いずれもスノーシューだ。
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 8:15、我々も出発。空は真っ青。快晴だ。国道29号線を渡り、新戸倉トンネルへ向けて少し進むと雪に覆われた旧道との分岐。板を装着し、雪の上を歩きだす。すうさんはシール、私はステップソールだ。雪面には、複数のスノーシューが歩いた立派なトレースができている。いわゆる高速道路が敷かれているわけだが、そのトレースをたどっても、外しても歩きやすさに差がない。要するに、雪が薄い、そしてふわふわで柔らかいのだ。場所によっては、昨日積もった分だけのごくごく薄いところもある。さらにスキーのトレースもある。滑降のようだ。雪は昨日積もったもので、トレースは真新しい。今朝のものと思われる。もう降りてきたの?
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 旧道の鉄格子でふさがれた戸倉トンネルのの脇を通過し、さらにもう一段階古い峠道へ。ちなみに新戸倉トンネルで峠を越える現在の国道は平成になってからできたもの。戸倉トンネルの旧道は昭和時代にできた道。そして、いまたどり始めた尾は明治の道。急カーブの連続で標高を上げ、切通しの戸倉峠へ。
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 戸倉峠に立つと西側、つまり鳥取県側の展望が開ける。家ノ谷川が流れる大きな谷だ。その戸倉峠から県境尾根の鳥取側の斜面につけられた林道を北上する。正式名称は知らないが、家ノ谷林道と呼ぶことにする。林道は平らなのでスキーで歩くのに十分な雪があるが、進行方向右上の植林の中の雪はかなり薄い。この先で尾根に乗り上げるのだが、雪がないとスキーで歩けない。
 尾根の鞍部が取り付きのポイント。ただし、ひとつ目の鞍部は見送った方がいい。鞍部からいきなり急登となり、そのあと下りで、苦労して稼いだ標高差が水の泡となる。その小ピークを越えた先の鞍部から尾根に取り付けば、あとは緩やかな稜線歩きとなる。
 にぎやかだったトレースは、いつしかスキーの下りとレースのみとなり、それに誘われるように2つ目の鞍部に取り付く。気づけば植林の中のダブルトラックを歩いている。林業の作業道だろうか。車道にしてはきつい勾配で、ステップソールでぎりぎり登れるという感じ。多くはないものの、スキーに十分な雪がある。そのダブルトラックのおかげで、楽に尾根に乗り上げることができた。2年前にもここを訪れているが、その時にはこのダブルトラックはなかったと思う。
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 稜線でスノーシューのトレースが合流。雪面がにぎやかになる。どうやら小ピークを乗り越えたようだ。その先にまたダブルトラックが見える。家ノ谷林道から何本か分岐しているようだ。
 緩やかで長い尾根歩きが始まった。植林の中にブナなどがなじるようになり、それが左は植林、右はブナ林となり、そして完全にブナ林となっていく。緩やかどころか平坦な区間や、わずかであるが下りもあり、なかなか標高が上がらない。さらに言うと、このコースを復路にすると、スキーが走らない区間があり、それなりに歩きとなってしまう。東隣の坂ノ谷コースの方が滑降には向いている。その代わり、県境尾根からは落葉したブナ林越しに三ノ丸が見える区間がある(坂ノ谷コースからは見えない)。というわけで、県境尾根を上り,坂ノ谷コースを下る周回コースを組んだ。
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 太陽は高く上り、立春を過ぎた日差しがさんさんと降り注ぐ。葉を落としたブナ林では、その日差しまともに浴びた雪面は湿って重く変化している。春の雪だ。一応これを想定して、昨日スキー板にワックスをかけたのだが、やはりそれでも板に雪がくっつく。雪面に強く押し当てながらのすり足で、くっついた雪は外れるが、ワックスをかけていなかったらかなり難儀したに違いない。すうさんもシールに雪が付くのを気にしている。
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 かつて(昭和の初め頃まで)三ノ丸と呼ばれていた標高1182m付近で、小休止。行動食を食べる。ちなみに本日の目標である現在の三ノ丸である1464mピークは、当時二ノ丸と呼ばれていた。藪が雪に覆われた季節にスキーツアーコースとして使われていた県境尾根だが、坂ノ谷林道の延伸により現在の坂ノ谷コースが一般的となり、県境尾根をたどる人はいなくなった。三ノ丸という名前が別のピークに奪われたのもそのせいかも知れない。近年、再び県境尾根が歩かれるようになったのはインターネットとGPSレシーバーの普及によるものではないかと思う。GPSレシーバーにより登山道も道しるべもなくても迷わずに歩け、そうして開拓されたコースがインターネットによって広められる。私が初めて県境尾根を滑った2005年には誰とも出会わなかったのに、2年前も今日も普通に人が歩くルートとなっている。
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 ブナ林から垣間見える三ノ丸が徐々に近づき、下山してくるスノーシュー登山者とすれ違うようになる。我々より一足先に出発した単独のスノーシューハイカーともすれ違った。
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 そしてブナ林が終わり雪原が広がる。いよいよ三ノ丸だ。やはり雪は少なめで、少し笹が顔を出している。でもまばらなのでスキーで滑るには問題なさそうだ。季節風の当たる両線の西側の灌木には小さな樹氷が付いている。
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 三ノ丸は山頂より若干低いものの、展望の良い顕著なピークである。そして、わかさ氷ノ山スキー場、県境尾根、坂ノ谷コース及び殿下コースの各登山道が集結する交通の要衝でもある。よって、こんなに天気のいい日には入れ代わり立ち代わり人の姿がある。ピーク周辺には、東屋、避難小屋、展望櫓と建造物が3つもある。避難小屋の前にはスキー板。我々と同じくテレマークスキーだ。
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 空の青が濃い。北方に見える山頂は例年の白さがない。笹が出ている。近隣の扇ノ山や東山、そして但馬妙見山から蘇武岳の連山などはくっきり見えるものの、わがふるさと丹後の山や伯耆大山はわからなかった。そうそう、近隣の山の一つ「くらます」のオープンバーンは、いつもは真っ白なのだが、今日はやや黒い。笹が出ているようだ。
 山頂方面からやってきたスノーシューの2人組は我々より先に駐車場を出発した年配の夫婦らしき男女連れだ。ということは山頂まで往復したの(聞かなかったけど)。だとしたらかなりの健脚だ。間近に見え、標高差もあまりない氷ノ山の山頂だが、両線にはアップダウンがあるため片道1時間程かかる。彼らの出発は我々より10分くらい早かっただけなのに、いつの間にか2時間の差が付いたということか。「スキーは下りは楽で速くていいねぇ。我々はのんびり行くよ」なんて言われた。なんという余裕。
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 すうさんがシールを外し、いよいよお待ちかねの滑降だ。坂ノ谷コースへ向けて緩斜面を滑りだす。笹のトラップに引っかからないように気を付けて。春の雪であまり板が走らないからちょうどいい。ゆっくりでも、歩くのではなく、万有引力によって、自分でコントロールしながら進んでいく。これが楽しい。
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 雪原からブナ林へ。疎林の緩斜面なので、快適なツリーラン。「どこかで小休止を」というすうさんに、「これから雪がどんどん悪くなるから林道に降りる手前まで滑っちゃいましょう」と返したのだが。結局すうさんとはぐれてしまった。
 時折何かに引っかかるような雪面。スピードが乱高下する。典型的な春の雪。特にステップソール板の私はすうさんから遅れがち。いつしかすうさんの後ろ姿が見えなくなっていた。そして、このコースは途中で二股に分かれる。一つは、登山道に沿ったルート。もう一つは、冬限定のスキーツアーコース。事前にスキーツアーコースをたどろうと申し合わせていたのに、気づけば登山道沿いコースにいる。にぎやかなトレースに導かれたようだ。すうさんはどっちに行ったのだろう。落葉した疎林はかなり先まで見渡せるが、すうさんの姿はない。やっぱり、ツアーコースに行ったのだろうか。登り返すことにする。そしてツアーコースへ。こちらはブナの木につけられた番号札をたどる。トレースは少ないがスキーのものもある。がスキーのトレースが途中で引き返しているではないか。すうさんはこちらには来ていないのか。だが、もう登り返す気はない。山中で落ち合うのは困難だ。もう下山しよう。下山口はお互いにわかっている。
 トレースがにぎやかな登山道沿いと違い、ツアーコースには1人分か2人分のスノーシューがあるのみ。ブナ林から植林へと変わりやや雪質は改善するが、それでも雪は重く板の走りは悪い。はやくすうさんに再会したい。
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 小さく浅い谷を滑り林道に降り立つ。雪質も斜度もこの日一番快適な斜面だった。
 林道に降りてびっくり。数本の轍で雪面が切り裂かれている。四輪駆動車の集団走行のようだ。こんな山深くまでクルマが入り込んでいるとは。
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 すねくらいまである深い轍をたどるように滑る。クルマのタイヤで踏まれた圧雪でなければ板が走らない。ただし、底面がデコボコしているのと、左右のスキー板ぎりぎりの幅しかないので、スキーのコントロールができない。スピードが出すぎたら、強引に側壁を崩すようにして轍を脱出する。
 この轍の主である複数台のクルマは今どこにいるのだろう。この林道は、氷ノ山国際スキー場へと通り抜けができるのだが、最高地点の大段ヶ平はここよりも100mほど標高が高い。ここよりもっと雪が深い可能性がある。つまり超えられない可能性が高い。往復した後ならいいが、突然背後から車がやってきたら怖いではないか。
 そんなことを思いながら、林道の三叉路まで下る。私がたどった冬限定のルートと登山道沿いのルートが合流する地点。ここですうさんが待っていてくれるかも知れないと期待したがいない。無雪期の坂ノ谷登山口まで行ってみようか。いや、下山しよう。「下山てんでんこ」だ。
 大きな地震が起こり津波の危険がせまったら、身内を助けに向かうのではなく、とにかく自分が助かることを考えて逃げる。これが、三陸の「津波てんでんこ」。身内を見捨てるのではなく、信頼しての行動だ。
 我々ははぐれたわけだが、道に迷ったわけではない。それぞれ(てんでんに)下山すればいいのだ。
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 ここから一気に林道の雪が少なくなる。薄くなるどころか、路面が露出している。何とか雪をつないでいこうと試みるが、板を外さねばならない場面が何度も訪れる。私のすぐ前を下山するスキーヤー。短めの板の着脱の際に見えた滑走面にはシールが付いている。全面でなく、私の板で言うとステップソールのある範囲。「スキーシュー」というやつだ。そのシールは外せないもの。2年前の県境尾根の下山中にあったスキーヤーが履いていた。もしかして感動の再開、かと思ったら違った。さらにその前を行くスノーシューを背負った2人組。後で分かったことだが、彼らは3人組だった。当然、スキーが遅れがち。本当はもうあきらめて板をザックに固定して背負った方が早いとわかっていても、滑れるところはできるだけ滑りたい。
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 腹が減った。行動食の残りを出して食べる。そして、路面が露出した轍を外し、路肩の雪の上を歩いていたとき、岡山ナンバーのSUZUKIジムニーが追い越していった。さらに、2台のジムニーと、1台のジープ(Jeep)が続いた。すべて岡山ナンバーだった。
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 カーブを繰り返して林道は標高を下げ、坂ノ谷川を渡る橋まで下りてきた。谷底に降りると林道は雪に覆われていた。結局ここまでは、板を担いで歩くことと、板を装着し滑走面と石の角がこすれるのを気にしながら歩くことの繰り返しった。日当たりの悪い谷底まで下りるとまた雪が復活するに違いない、そう信じて板をザックに括り付けることはしなかった。
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 四駆の轍の圧雪を滑る。やっぱりスキーはこうでないと。
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 茅葺きの建物が見えてきた。ヤマメ茶屋だ。しかし、窓ガラス話われ、暗い屋内は雑然としているように見える。ああもう営業していないんだな。かつては、こちらから入山するときには、ノートに名前などを記入し、登山届提出のようなこともしていたのだが。また、国道の分岐から数百メートル奥にあるため、かつては自前の重機で除雪していた。除雪の限界点は雪が山積みにされ、四輪駆動車が林道に入ることはなかった。
 ヤマメ茶屋を過ぎると、カーブの向こうから人影が現れた。すうさんだ。やはり先に下山していた。だいぶ待たせたようだ。聞けば、登山道沿いのコースを下ったとのこと。トレースをたどって滑っていたら、ついつい冬限定のコースとの分岐を過ぎてしまったそうだ。林道三叉路でかなり待ってくれていたようで、私が登り返さなければそこで出会えた可能性が高い。下山口まで下って待っていたら、私の前に下山したスキーシューを含めた3人組から私も下山中であることを聞いて安心したそうだ。スキーシューの人は、テレマークスキーに興味があるようだったのこと。
 さて、デポした自転車でクルマを回収に行こう。朝はあまり踏み抜かなかった雪はすっかり緩み、ずぼずぼと深く脚が沈む。3重のロックを解除。その間に国道を自動二輪が走っていく。下界の最高気温は15度を超え、春の訪れを感じさせる。「冬来たりなば春遠からじ」というが、ことしは冬を飛ばして春が来るらしい。
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 1.5km、標高差70mを登り新戸倉トンネル手前の駐車場へ。路肩にはほんの少し氷が解け残っている個所もあった。車線内は大丈夫だろうけど、今の時期に自動二輪でこの峠を越える勇気は、私にはない。
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 ドライブの途中の雪見のカップルのクルマはいるが、朝から入山中の駐車車両は私の一台だけ。クルマに自転車を積み、ヤマメ茶屋入り口に戻る。すうさんとスキー板をピックアップし帰路に就く。
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 長いコースだった。坂ノ谷コース、県境尾根コース、いずれもピストンしたことはあるが、両者をつないだ周回は初めて。雪の状態が良ければ、三ノ丸から1時間ほどで下れる坂ノ谷コースだが、今日は時間がかかった。県境尾根を下った方がよかったか。いや、戸倉峠の旧道も雪が薄かった。朝のうちは雪に覆われていても、午後には路面が出ていたかもしれない。少なくとも、根雪がなく、前日の雪の層のみのところは午後には地面が露出したはずだ。さらに言うと、坂ノ谷林道も、朝ならまだ雪に覆われていて板をつけて歩けたはず。ほらほら、朝は真っ白った若杉高原大屋スキー場のゲレンデも、帰り道には8割方茶色い地面が露出しているよ。ほんの数時間で、まるで別世界だ。

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コメント

 ありがとうございました。そして、すいませんでした。これからもっと考えて行動します。
 坂の谷もいいけど県境尾根も良かったです。県境尾根はスキーを外すことがなかったので、歩くことが多いかもしれないけどここを帰り道に使うのもあり、だと思います。次は県境尾根を戻りたいですね。
 ワサビ谷はそれはそれでおもしろいけど、今回の場所も優雅なテレマーク向きでとてもいい。あまりスキーをしていない自分にはもっといいところでした。

投稿: すう | 2020/02/29 18:50

 ステップソールにシングルキャンバーの組み合わせは、滑りませんね。前日にワックスをかけておいてまだましだったはずですが、大変お待たせしましたね。
 本文にも書きましたが、県境尾根なら板をつけたまま下れた、ということはないでしょう。根雪がなく、前日積もった雪の層だけの箇所がありましたし。当然、朝の内なら坂ノ谷林道も板を外さなくても良かったでしょう。ただ、勾配があって板がよく走る区間が雪解けしていたのが残念でしたね。あと、根雪のない区間がどちらが長いかといったことも含め、どちらを下った方がよかったかは、実際同じ条件で両方訪れなければ結論は出ませんね。個人的には、尾根を下る快適さでは坂ノ谷が勝っていると思います。

投稿: はいかい | 2020/03/02 22:08

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