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2017/03/29

ホワイトくらます西面滑降

■くらますでございます(山の名は)
 その珍しい山名のせいで、ずっと前から存在を知っていた「くらます」。意識したのは去年、2016年2月11日。快晴の氷ノ山三ノ丸から南方、兵庫・鳥取・岡山の三県境をなす山々の中の峰のひとつに立木のない真っ白な斜面が見えた。スキー場? 方向からして「ちくさ高原」?
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 帰宅後、調べてみるとその山が、「くらます」だった。
 いつか登ってみたい。そして、その真っ白なオープンバーンを滑ってみたい。
 そして雪に恵まれた今シーズン、決行することとなった。
 急斜面と藪のため、登山道は整備されていない。南北に伸びる山頂稜線上の標高約1000mの小通峠(こどれとうげ)に舗装林道がしかれている。くらますは小通峠の北方にある標高1282mであるが、その間には標高1137mの高倉、そして1144mの無名ピークがあり、藪の中のアップダウンを越えなければならない。というわけで、藪が雪に埋もれた冬場の入山する人の割合が多い山だが、小通峠への林道は当然除雪されておらず、西または東の急斜面を登ることとなる。東は、国道29号線沿いといってもいい加地集落から、未除雪の加地林道を延々とたどらねばならない。西は、麓の吉川集落までクルマで入ることができ、積雪期の入山口としてはこちらが主である。
 というわけで、吉川集落からの入山と言うことで計画を練る。標高差は700mあり、登りの遅い私ではラッセルでの登頂は難しい。ということで残雪期を狙うことになる。3月初旬にチャンスがあったが、ボーっとして逃してしまった。そのあと2度ほど寒の戻り。ようやく雪が落ち着いたのが3月下旬というわけだ。
 相方は、2年前に一緒に三ノ丸からくらますを眺めた、すうさん。今シーズンは、ちょうど1ヶ月前の大江山以来の同行だ。 
■おはようございます、くらます
 3月25日5時20分、京丹後の自宅を出発。豊岡市の但東、出石を経由して、7時に養父市大屋町ですうさんと合流。若杉峠、戸倉峠を越えて鳥取県若桜町へ。道の駅「若桜」でトイレ休憩を入れ、岩屋堂へと引き返す。県道72号線を5km南下し吉川集落へ。標高500m程の山間部にあるが、なかなか大きな集落だ。世帯数は30以上ありそうだ。
 途中の戸倉峠の兵庫側などは路肩にまだ1mを越えるような積雪が見られたが、鳥取県に入り周囲の山々を見上げながら「雪はまだあるのだろうか」と不安を感じていた。しかし、吉川に近づくに従いその不安は薄れていった。そして、集落の一番奥の牛舎の先で、車道をふさぐ分厚い雪を見て不安は消え去った。
 固さなどの状態を確かめるために雪の上に乗ってみると、表面は凍てついているがすぐ下の層は緩んでいてツボ脚なら少し踏み抜く。曇天で放射冷却は起こらず、冷え込みは緩めだった。しかし、スキーならラッセルはないだろう。雪から降りたところで転倒。雪解け水が凍りついたブラックアイスバーンとなっていた。
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 今日除雪作業をすることはないだろうが、それでも除雪作業の邪魔にならないように少し間をあけ、もちろん牛舎に出入りする人の邪魔にならないような位置を考えて路肩に駐車。ちなみに我々の1台のみだ。
■おじゃまします、くらます
 出発の準備を整え、雪に埋もれた車道を歩きだす。すうさんはシール、私はステップソールで。当然もう民家はないのだが、すぐに山に入るわけではなく、少し開けた谷には田んぼがあるようで、農作業や山仕事の関係と思われる納屋が見られる。道路のわきに「県管理はここまで」という意味の標識があった。この先は県道でなく沖ノ山林道ということか(もっと先まで県道として表示された地図もある)。その辺りの木々の切れ間から山が見えた。くらますだ。よし、白い!
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 足元の雪面には、ツボ脚、スノーシューまたはかんじき、そしてうっすらスキーのトレースが見られる。スキーは下りのものとみられる。
 谷が狭まりいよいよ山に入り、沖ノ山林道はカーブを繰り返し標高を上げていく。ヘアピンカーブの先端から飛び出しているのがヘンブ谷川沿いの林道。こちらへと入り込む。下りとみられる2人分のスキーのトレースがついている。雪面が凍てついていてステップソールのグリップが弱い。踏まれていないところの方がいいかと路肩に寄ったら、側溝の落とし穴に落ちた。脱出に体力を消耗した。
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 ヘンブ谷川に沿ったダブルトラックは、蛇行の振幅は小さく結構な勾配で直登に近く登っていく。この谷の周辺は、くらますの麓で最も勾配が緩い。いたるところに植林があるので、山の周囲からいくつもの林道が山腹に伸びているが、ヘンブ谷以外は蛇行が激しく距離がかさんでしまう。また下りでも勾配が緩く板が走らない。その点、今歩いているヘンブ谷川の林道は、むしろ下りでのスピード出すぎが心配になるくらいの勾配がある。距離、標高差の両面で最も山頂に近い吉川集落までクルマで入れることと、このヘンブ谷の林道があることが、積雪期にこのルートでの入山が一番多い要因である。
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 さすがに雪解けも進んでいて、コンクリート舗装の路面が顔を出している箇所がいくつかあった。なんとか雪がつながっていて、板を外すことなく進むことができた。
 砂防ダムを越え、勾配が急になってきたところで私もシールを装着。もう雪の切れ目はない。
■急登でございます、くらます
 標高800m付近が林道終点。さあ、ここからは道がない。スキーアイゼンを装着し、スキーの下りトレースにいざなわれるように斜面にとりつく。林道をたどってきたわけだから出だしは植林だ。しばらく登ると植林は終わり、比較的なだらかな雪原に出た。ここは楽しく滑れそうだ。朝は曇天だったが、いつしか青空が広がり、とても明るい雰囲気。期待を胸に上る。さらに行くと落葉樹の疎林となり、ここも十分ツリーランが楽しめる感じ。
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 先ほど道がないと書いたが、国土地理院の地図には林道終点から深い谷に破線が描かれている。我々が登っているルートはその破線の北側。谷の南側は植林。当然自分たちが今いる方が滑降に適しているので、登りでこちらにトレースを目印として付けていくのは正解だろう。スキーの先行トレースはさらに北方に消えていった。我々は、くらますの頂のすぐ南の稜線に向けて直登していくことにする。結局先行トレースを上部で見ることはなかった。
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 しかし、進むにつれて勾配は急になり、木々は密になっていく。振り返ると木々の合間に東山が見える。また周囲には大きな岩が見られる。ちなみに、くらます山頂にある三等三角点の点名は「天狗岩」だ。
 標高1000mを越えたところで正午となり、昼食の休憩。
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 登行を再開するが、勾配はさらにさらに増していく。木々の密度も濃く滑るのも快適ではなさそうだが、斜滑降できるだけの隙間はある感じ。登りでは、長い斜登行で大きくジグザグを描いていく。背後の景色にも変化があり、東山の左の稜線の奥に沖ノ山が顔を出した。
 稜線らしき斜面の端は見えているのだが、なかなか近づかない。あまりにも遅いので、先行したすうさんが、心配して降りてきてくれた。
 ようやく勾配が少し緩んできた。稜線が近い。大変な時間を要して、そして、どうにか稜線に到着。稜線歩きは勾配が緩く快適。東側の展望が開け、右後方に立派な山が見えてきた。このあたりの地理にはあまり詳しくなくてわからなかったが、山頂で地図を見たら三室山だった。さらに前方には大きな氷ノ山も見えてきた。三ノ丸が白い。
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 くらます東斜面に注目しながら山頂を目指す。昨年氷ノ山から臨んだオープンバーンが気になるところだが、稜線の両側に結構立木のない斜面があるようだ。
■ありがとうございます、くらます
 両側が切り立った狭い山頂、標高1282mに到着。雪庇に要注意だ。さすがに急勾配の山だけあって展望がいい。
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 そして立地もいい。兵庫県の標高ベスト3である、氷ノ山(1510m)、三室山(1357m)、後山(1344m)、そして鳥取県の東山(1388m)、沖ノ山(1312m)にぐるりと囲まれている。また沖ノ山の左手の奥には那岐山も姿を見せているし、現地では認識できなかったが東山と沖ノ山の間には遥かに大山を望むことができる。写真には辛うじてその山影が写っていた。
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 ただし、稜線は南北に続き、特に北方はすぐ近くに同じような高さの北ピークがあり、そちらのブッシュにより展望がさえぎられる。北方の扇ノ山はどうにかブッシュの脇に見えた。足元の雪の量が少ないと見えなかったかもしれない。
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 北ピークとの間の鞍部は結構急に見える。お目当ての北ピーク東斜面は目の前だが、もうそちらを滑っている時間はないので泣く泣く諦める。
 登りが遅くてごめんなさい。すうさんのペースなら十分北ピークの東斜面で遊ぶ時間があったはずなのに。まあ、登頂を果たしたのだから撤退ではないよね。
■滑ります、くらます
 シールを外し、登ってきたルートをたどる。狭いので慎重に。そして西斜面へ。重いザラメだが、何とかコントロールできる。最初は少し緩いので何とかターンできたが、急斜面になってくるともうダメ。斜滑降・キックターンを繰り返す。斜面が広いのが幸いだ。少し斜度が緩んできたらすうさんは果敢にターンをしているが、怖がりの私はキックターンに頼るしかない。
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■メリーくらます
 我慢の下りを経て、ようやく斜度が緩み木々が疎らになってきた。登りで楽しみにしていた斜面だ。ここで快適な滑りを堪能。お互いの滑りを動画に撮り合う。
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しかし、楽しい時間はあっという間に終わってしまい、植林帯に突入。何度も転倒。
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 そしてようやく林道に降り立つ。ヘンブ谷の林道は斜度があって板が適度に走る。ぐんぐんと下っていく。雪が切れかけたところを慎重に越え、あっという間に沖ノ山林道との出会い。こちらは斜度がなくて板が走らない。ほんのわずかに登りがあって、そこでステップソール板の本領を発揮するが、そのあとのごく緩い下りではステップが抵抗となり、すうさんのシュプールを拝借しているのに、あれよあれよと引き離される。そういいながらも下りは速く、農作業小屋などの建造物が見えたと思ったら、牛舎が見えてすぐに除雪の限界点。お疲れさま。
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 クルマにスキーなどを撤収して帰路に就く。お目当ての山頂北ピーク東斜面を滑ることはできなかったが、雪は十分あって、登りも下りもずっと板を付けたまま行動できた。滑りもそこそこ楽しんだ。まあ、楽しかったね。
■家に帰るまでがスキー登山です
 戸倉峠、若杉峠を越えて大屋ですうさんとお別れ。八鹿氷ノ山I.C.から北側の日高神鍋高原I.C.まで延伸し、今開通したばかりの北近畿豊岡自動車道を通って帰ろう。大屋・養父の旧町境手前の交差点を琴引トンネルへと左折していくクルマが多い。国道9号線および八鹿へのルートだが、この先の自動車道を使えばいいのに。と思いながら大屋川沿いの県道を進み、養父I.C.で南に向かうすうさんに続いて入線しようとしたのだが。北向き車線には入ることができない、ハーフインターチェンジだった。
 そういうことか。先ほど琴引トンネルへと向かったクルマの中には、八鹿氷ノ山I.C.へと向かうクルマもいたのかも知れない。ここまでくるともう自動車道の利用は遠回りになるのであきらめる。
 出石・但東経由が最速ルートだが、安いガソリン給油するために円山川沿いの一般道を日高に向けて北上。見事に空いている。ところが日高で、複数の消防車、救急車、ドクターカーに遭遇。いずれも血相を変えて叫びながら走っている。帰宅してから調べてみると、なんと自動車道開通直後に立て続けに3件の追突事故。南向きで1件、北向きで2件。そのうち北向きの片方は4台の玉突き。開通直後に、3時間の通行止め。
 自動車道に乗れなくてよかった。やはり、トラブルなく変えるのが一番大事。
■振り返ります、くらます
 この報告を書いていて気になったのは、スキーの先行トレース。下りのシュプールだったが、標高900mから下は我々が上り下りしたコースと同じだが、それより上は北方からトラバース気味に降りてきている。そして山頂付近ではトレースを見かけなかった。
 もしかすると北側のピークから直接下ったのかもしれない。
 我々が登頂した三角点のあるピークが最高点。そのすぐ北(直線距離400m足らず)のピークは、三角点より標高で20mほど低い。その分広くなだらかな雪原となっていて東斜面を目当てに訪れる滑走系登山者ばかりでなく、スノーシューやかんじきでの登山者もその解放感と展望を目当てに訪れるようだ。
 我々は、自分たちが立つ三角点ピークから鞍部への急な下りを見て北ピークをあきらめた。三角点ピークから鞍部までの下りは標高差40m程の急勾配だが、鞍部から北ピークへは標高差20mでしかもなだらか。北に行くと、戻ってくるのに時間がかかると思ったのだ。
 来た道を引き返す、という固定観念にとらわれ、北ピークからそのまま西斜面に下るという発想がなかった。北ピークへといっておけばよかった、と今にして思う。まあ、そういうことを思いつく余裕がなくなったのは、私のスローな登りのせいなんだけどね。
 地図を見れば、我々はヘンブ谷の林道終点からほぼ真東に上り下りしている。ヘンブ谷林道の終点から標高1000m辺りまでは真東直登で正解だっただろう。滑りを楽しめる斜面があったし(あの斜面があるかないかで、今回のスキー登山の満足度は大きく異なる)。問題はその上だ。
 三角点ピークの南西側の標高1050~1150m付近は周辺でも最も勾配がきつい辺りとみられる。標高1000mあたりから鞍部に向けて北東に上り下りするコース取りもあり得る。どっちみち登りは斜登行、下りは斜滑降でジグザグを描いていたわけだから、スイッチバックせずそれを斜めにいけばいい。標高1000より上ならば尾根や谷も浅く、トラバースしやすいように見受けられる。見えている範囲、つまり浅い谷から出ないことにこだわりすぎていたのではないだろうか。特に登りで体力を消耗する方向転換を減らす意味もある。
 もし、二度目があるなら、いろいろ考えてみたい。

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コメント

 ありがとうございました。雪もあり、天気も良くて楽しかったです。思っていたより滑れました。もっとヤブが濃いと思っていたので以外でもありました。
 北ピークにも行ってみたかったけど、次回のお楽しみということにしましょう。

投稿: すう | 2017/04/01 11:59

 チシマザサや細かい木が雪に押さえつけられていたようですね。植林は中腹以下、上部は自由なコース取りができそうです。先行トレース(下り)は、よくわかった人達だったように思われます。北ピーク東斜面を楽しんだ後、ヘンブ谷の林道終点の上の斜面へとつなげば、充実のコース取りですね。
 昨年、氷ノ山から撮ったくらますの写真を見て、北ピークの東斜面への思いが高まります、くらます。
 またたくさん雪が降る年が来ることを期待しています。

投稿: はいかい | 2017/04/01 19:41

初めておじゃまします。
若桜・山ボーイと申しますが、やまあそさんのHPコメントを拝見し、こちらのレポート読ませていただきました。
以前無積雪期に同林道の一部と994Pの尾根を使い登りましたが千m弱で笹薮敗退してしまいました。是非とも再戦したいと思っておりますので今回のコース図を見せていただけないでしょうか、突然に失礼ながらよろしくお願い致します。

投稿: 山ボーイ | 2017/04/09 21:31

 この山行の後、山ボーイさんのブログを参考に加地側からのくらますへ挑みました。そのお礼を、山ボーイさんのブログにコメントしていたところです。あらためて、お礼申し上げます。
 さて、コース図はもちろんお見せします。ただし、こちらの、つまり吉川からヘンブ谷のコースで本当にいいのですか。文脈からすると加地川からのコースと思われるのですが。
 また、私は測量法の規定をクリアできているかどうかがよくわかりませんので、Webページやブログに地図画像の掲載をしておりません。電子メールに添付してお送りしようと思います。以下のサイトに管理者連絡先としてメールアドレスを掲載しております。こちらに連絡をお願いします。ただし、迷惑メール防止のためメールアドレスは画像にしてあります。よってコピー・アンド・ペーストできませんので、キーボードで入力していただきますようお願いします。
http://www.geocities.co.jp/Athlete/3519/
 では、今後ともよろしくお願いします。

投稿: はいかい | 2017/04/09 21:59

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