小春日和の「ツイードピクニックin長浜」
「ツイードラン」という言葉を知ったのはちょうど5年前のことだった。宇治のいさなごのぼる君とのツーリングのために国道9号線を南下しているときに前を走る自動車の屋根にランドナーが積まれていた。そのクルマが須知でコンビニに寄ったので、どんな人が乗っているのだろうとこちらも駐車場へ。するとクルマから出てきたのは、ジャケットにネクタイ、そしてニッカボッカーの出で立ちの面々。その姿に軽い衝撃を受け、帰宅してからいろいろと調べていて出会ったのが「ツイードラン」というキーワード。ツイードとはイギリスやスコットランドの毛織物の一種で、その素材の洋服や帽子などを身につけて自転車で走ること。イベントとしての発祥は2009年のイギリスとのことで、日本でも東京や名古屋で2013年頃から開催されている。
そんなイベントがこの秋、琵琶湖の畔の長浜で開催された。晩秋の時期であり、やはり気になるのは天候。週間予報で、当日雨の可能性が低いことを確認してからエントリー。ツイード素材の服など持っていないので、本番まで1週間を切ってから慌ててネットでジャケットと帽子を購入。直前には快晴の予報へと変わっていった。
11月12日、6時前にクルマで丹後を出発。舞鶴、小浜と若狭湾沿いを東に進み、軽く山越えで近江今津へ。琵琶湖の北辺を時計回りにたどり、木之本に9時前に到着。合併によりここは今や長浜市街だ。湖岸道路に入るが、ここからが結構長く30分ほどクルマを走らせ、長浜ドームに近い水泳場の駐車場へ。クルマから自転車を降ろす。本日はランドナーであるが、もう1台のVigore。昨夜1年ぶりに家の周りを走ってみたら、フリーのスプロケットのトップ側にチェーンが外れる。アジャスターボルトを調整する。そして、今日、チェーンに油を差して準備完了。まずは琵琶湖を左に見ながら北上。快晴のため、紅葉した街路樹が赤く黄色く輝いている。心配なのは気温。普通ならば肌着のシャツにポロシャツで十分な陽気。今日は、ツイードのジャケットを着ている。汗をかくことを想定して、飲料水は1Lも用意している。
湖畔の長浜城の公園が近づいたところで、内陸にハンドルを切る。旧長浜の市街地にある「黒壁スクエア」の中、曳山博物館に隣接する「きぃなパーク」が集合場所。黒壁スクエアとは、江戸、明治時代の古い建築物が建ち並ぶ町並みで、今は観光地としての長浜の中心部といえる。ちなみに、黒壁とは黒漆喰を塗られた建築物の外観から来ている。
その旧市街を目前に道に迷ってしまった。GPSレシーバーに位置データを入れておけばよかった。黒壁スクエアの周辺も、古い風情ある町並みが広がっているのだ。結局目的地よりも少し南をさまよっていたのだった。なんとかたどりついた曳山博物館の建物の脇を抜け、お堀沿いの芝生の広場「きぃなパーク」へ。10時ぎりぎりに受付に滑り込む。周囲には、すでにツイードに身を固めた人々が集まっている。直前に定員の60名に達したとのこと。
主催者による開会宣言、スタッフの紹介、注意事項の説明、記念撮影の後、10時半に4つの班に分かれて自転車で旧市街へと繰り出す。自転車のコースは5つのセクションに分けられていて、まずはSection1「旧市街」。観光客で賑わうアーケード街は安全のため自転車を降りて押す。しばらく旧市街を練り歩いて郊外、琵琶湖方面へ。
琵琶湖岸に出ると一気に開放的な雰囲気になる。Section2「琵琶湖畔」だ。琵琶湖が晩秋の低い日差しを受けてきらきらと輝いている。街路樹の紅葉も赤く鮮やかだ。ヨットハーバーから長浜城へ。
そして湖岸の自転車道へ。琵琶湖一周なのか、そうでないのかわからないが、我々以外のサイクリストも行き交う人気の自転車ルートだ。気持ちよく走って水泳場の浜辺でしばし休憩。そしてまた走り出す。南浜でまた休憩。ここはトイレや東屋があり、手作りお菓子と暖かいトマトスープのサービスを受ける。
暑さを心配したが、10~15km/hののんびりペースなので、体温は上がらずに快適に走れる。持ってきた飲料水もあまり飲まず、むしろトイレに駆け込んでしまった。
さて、次は琵琶湖畔を離れ姉川に沿って内陸部へ。Section3「姉川辺」。堤防の上の道からは伊吹山を望む。古いコンクリートの橋を渡り、さらにさかのぼると今度はまっさらの橋を渡る。なんと先ほど開通式を終えたばかりで、まだクルマは通行止め。歩行者と自転車だけがのびのびと通る。
姉川の堤防を降り、集落の中へ。Section4「集落探訪」。次は、田園の中に点在する集落をたどる。集落の中には曲がりくねった水路があり、黒壁スクエアとはまた違った風情がある。子供たちが「こんにちは」と元気に声をかけてくる。
集落を抜けて田園広がる平野を行く。するとやはり伊吹山の存在感が際立つ。そうしてまた次の集落へ。こんな風に田園と集落を2度3度繰り返し、交通量の多い幹線道路へ出る。誌の中心部へと戻りつつあるということだ。
参加者とスタッフで20人未満のグループに分かれて走行していたのだが、迷路のような集落を行くうちインターバルがなくなり、いくつかのグループがまとまって大集団になってしまった。途切れない行列ができてしまい、周囲の交通に迷惑をかけてしまった。
そんなこんなで、旧市街へと戻る。Section5「凱旋」。正午過ぎで、スタート時よりもさらに観光客で賑わっている。もちろん、自転車を押して行く。
きぃなパークに戻ったら、一度解散。昼食を含めた自由行動の時間となる。ほとんどの人は、黒壁スクエアの中で食事をして町並み散策をしているようだが、私は自転車で少し移動。国道8号線まで出て、ラーメン屋へ。
きぃなパークへ戻り、14時30分からエンディングパーティ。ドリンクとシフォンケーキのサービス、そしてレトロな自転車をピックアップして紹介。中には、40年50年前なんて当たり前、100年近く前の自転車も登場し、私の20年前のランドナーなどまだまだ若輩者。さらにミュージシャンの楽器演奏で16時過ぎに閉会。さすがに日が傾いて寒かった。
会場を後にし、長浜城へ。夕日が琵琶湖の対岸、比良の山々に向かって落ちて行く。湖畔を南下し、長浜ドーム地下くの駐車場へ。水泳場の浜では、スポーツカイトを揚げている若者たち、ボードセーリングの撤収をしている中年男性。ああ、比良の山に夕日が沈んで行く。
日没を見届けてから帰路に着く。来た道を戻る180kmのドライブ。
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