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2015/04/06

高みに登り富士を見る旅(3)身延山地安倍峠

 28日、やや雲が多いが、晴れ。無料の朝食はあきらめて、6時にチェックアウト。今日は同じ場所に戻ってくるので、荷物をホテルに預かってもらう。新静岡のバスターミナルへ。自転車を輪行袋に収め、7:00のバスを待つ。バス会社によっては自転車を載せてもらえないのでやや緊張したが、輪行袋を持って乗車しても何も言われなかった。無事最後部の席に座る。靜鉄バスのサイトで事前に調べた限りでは「混雑していなければ」という条件付きで大きな手回り品を積めることになっている。始発の、新静岡から乗車したのは私と男性がもう一人だけ。平日には便がない早朝のバスの始発のだから混むことはないという想定は当たった。
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 しかし、その次の静岡駅から団体さんが乗ってきた。高校の弓道部女子が30人ほど。いきなり満車だ。実はこのあとビジネスホテルのそばを通るのだが、その最寄りのバス停からだと乗車をことわられるかもしれなかった。
 その弓道部も15分ほど走った市街地の中で下車し、あとはガラガラの状態で安倍川を遡る。途中、トイレ休憩を挟んで2時間弱、静岡市街から北へ45km、標高870mの終点梅ヶ島温泉まで乗車したのは、私だけだった。
自転車を組んで9:15出発。
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 旅館街の急坂を登るとすぐに建物は途切れ温泉街を見下ろすようになる。そして、冬季閉鎖のゲート。林道豊岡梅ヶ島線だ。今日もクルマによるストレスのない道を行く。開通は4月16日から。一昨日の湯之奥猪之頭林道よりも1ヶ月早く、あと半月あまり。ゲート付近に雪の気配はないが、一昨日よりも200m高いところまで登らねばならない。また、路面の落石はまだ撤去されていないので、何度も石の間を行く。細かい石が分厚く積もって路面が完全に埋没しているところもあった。そこは自転車を押して越える。
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 はるか右前方に滝が見えてきた。安倍の大滝だ。大学生だった頃、原付バイクと自転車で何度も梅ヶ島温泉までは来たが、安倍の大滝が見えるところまで来たのは初めてだ。
 ちらほら残雪が見えるのは八紘嶺の前衛のようだ。朝は雲が多かったが、徐々に青空の割合が増してきた。今日も富士山が見えるだろうか。
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 標高1090m程で、道路の左手に滝が現れた。案内板に「鯉ヶ滝(恋仇)」という滝の名称と、その由来となった伝説が記されている。
 道は沢筋につけられているので、滝があるということはその落差の分を登らないといけないと言うことだ。大きくトラバースしてヘアピンカーブで折り返して、標高差100m近く登って滝つぼから、滝の落ち口へ登る。
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 標高1200mくらいでとうとう路面が雪に覆われた。安倍峠の静岡県側は南斜面となっているので日当たり良好なのだが、ここからしばらくは沢の蛇行の関係で道路が尾根の北側となる。しかし、さらに進めば峠まではまた南側が開けた斜面につけられた道になるので、しばらくの辛抱ということだろう。というわけで、雪の上を自転車を押して行く。雪面には足跡が無数にある。八紘嶺を目指すハイカーのものか。雪が締まった部分はいいが、緩んだ部分は踏み抜いてしまう。雪の厚みは知れているが、何せ靴が低い。また表面が凍った部分があるので、雪面を良く見極める必要がある。
 予想通りの地点で残雪区間を突破。途切れながらではあったが、雪の上をトータルで1km近く歩いたようだ。日当たりが良い区間では少し前の残雪がまるでうそのようだ。
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 峠の手前でもう一ヶ所残雪区間があった。標高1400mを越えるとちょっとした日陰でも雪がとけ残るようだ。
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 その残雪区間を抜けたところが、八紘嶺登山口。駐車場とトイレがある。そしてそこから静岡・山梨の県境尾根のすぐ南側を行く。ほぼ稜線であるが、わずかに静岡側に道がついている。その先の鞍部で山梨側に道が越えていて、それが安倍峠。だから鞍部よりも手前の尾根沿いに最高地点がある。
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 八紘嶺登山口の駐車場から数歩歩いて県境尾根に立てば、富士山がどうにか見えた。ただし、山頂は手前の尾根のブッシュ越し。もっとはっきりと見たいものだ。
 林道の最高地点を過ぎ下りに差し掛かるとゲートがあった。県境の安倍峠はもう少し下ったところだが、これが県境ゲートということらしい。林道豊岡梅ヶ島線の山梨県身延側は水害により2,3年前から通行止め。復旧の見込みなし。また、大井川上流の井川ダムから山梨県の下部温泉に抜ける井川雨畑林道山伏峠は、両側で通行止め。やはり復旧の見込みなし。今回の計画の発端は、安倍峠と山伏峠で静岡山梨にまたがる周回コースだった。きっかけは、2011年秋に発売された「シクロツーリスト」誌の林道ツーリング特集。ちなみに、その記事の執筆者は20年前のパソコン通信のころから知り合いのサイクリスト。
 ところが、計画ができた時点で両峠は通行止め。かろうじて安倍峠の静岡側は通れるようになったが、後は待てど暮らせど復旧の見込みなし。そうするうちに、林道湯之奥猪之頭線の存在を知った。それから1年余り経ってようやく計画を実行することができたというわけだ。
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 ゲートを越えて少し下ると安倍峠。標高は1416m。ちなみにその手前の最高地点の標高は1460mほど。
 峠からは北側に急激に下るため、その先は残雪に道が覆われている。そして、木々の向こうに富士山が見える。落葉の時期だからこそ見える富士山だ。やっぱり、障害物越しでなく、クリアにその姿を見たい。
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 しばし休憩したあともう少し下ってみることにする。雪の上を自転車を押して行く。大きな左カーブで右手の木々の切れ目にくっきりと富士山が覗いた。やった今日も富士山をはっきりと見ることができた。湯之奥猪之頭林道、東京スカイツリー、そして安倍峠と3日連続で、完全に目標達成だ。やはり、この季節を選んで正解だった。
 雪がとけ地面が露出したところに腰を下ろし、行動食をとる。そして、雪の上を自転車を押して峠に登り返す。雪が緩んでいて進むのが重い。下りは楽だった。
 峠からはアスファルトの上を自転車に乗車して登り返し、ゲートを越えて八紘嶺登山口へ。また残雪区間を歩いて越えて、後は一気に梅ヶ島温泉に下る。
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 快晴のぽかぽか陽気となり、朝よりも賑やかな温泉街。狭い道路にクルマや自動二輪が止まって茶屋には観光客が見られる。また、自転車も3台ほど止まっていた。みなクロスバイクだ。そういえば今朝出発したビジネスホテルにもクロスバイクが2台止まっていたし、一昨日はロードレーサーが1台止まっていた。自転車が増えている。
 さあ、ここからは静岡市街まで距離45km、標高差850mの下り。梅の花が咲く安倍川沿いを走る。楽チンだろうと思ったが、南からの向かい風が猛烈でゆるい下りではペダルが重く感じる。
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 朝はバスの車窓から見た風景、そして20数年前に原付バイクや自転車で走った風景を懐かしみながら下る。安倍川は50kmにも満たないが、川幅は広くその姿はまさに大河である。上流の山間部でも谷は広い。ただし、水量は少なく、ただただ川原が広がっている。
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 平野橋を渡ってしばらくいくと道路は仮設となり川原に下りる。10日ほど前に土砂崩れで一時通行止めとなっていた。先日の土日が梅ヶ島温泉の梅祭りの直前にバスが復旧したばかり。
 この辺りで標高は200mを切り、開けた雰囲気。周囲は山村というより農村風景。もう下りという実感はない。安倍川の雄大さはもう河口付近と変わらない。
 何台もの自転車とすれ違う。ほとんどがロードレーサー。たまにクロスバイク。泥除けがついて、サイドバック装着のランドナータイプも一台。
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 蕨野から少し下ったところに、対岸の相淵集落へ渡る長い歩道の吊り橋がかかる。300m以上はあるだろう。1kmほど下流には県道の玉機橋があるが、徒歩では往復2kmの追加は長い。大きな橋を架けるには費用がかかる。小さな集落ではなかなかその費用を捻出できない場合がある。そうした中で費用を抑えて作られたのが、四国の四万十川などの沈下橋であり、この吊り橋なのだろう。
 玉機橋のひとつ下流にかかる竜西橋からは両岸に車道がある。左岸のほうが幹線道路なので、竜西橋で右岸に渡る。交通量が少なくてよい。
 竜西橋の次の曙橋からは土手の上を行く。車止めがあって自動車の通行がないので快適。しかし、変電所の辺りでテトラポッドなどの護岸の資材置き場を通り抜けねばならなかった。
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 少し車道を走った後、足久保団地でまた土手の上へ。お花見の真っ最中。花はまだ五分咲きかそれ未満だが、ぽかぽか陽気で気持ちいい。
 安倍川の向こうには竜爪山がそびえる。標高は1000mと少し。大学4年の晩秋に登った山。安倍川に沿って南北に連なり、富士川の谷との境をなす身延山地の最南の山だ。ところで、身延山地とは狭義では安倍峠より南の安倍川左岸の山を指すが、右岸つまり大井川の谷との境の山伏などを含める場合もあるという。また、身延山地を南アルプスの赤石山脈の一部とみなすこともあるそうだ。
 団地が終わり一旦車道に戻って支流の足久保川を越えたらまたクルマが通らない土手の上の道。今度は安倍口団地。団地に住む人々、特に子供が安心して過ごせる場が確保されているということか。人気のない運動場もある。
 突如、怒鳴り声が聞こえてきた。はるか対岸のグラウンドの野球少年の声だった。
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 川原と反対側の土手の下にテント張りのような建物の中で、馬がぐるぐる走り回っていた。競走馬のトレーニング場だろうか。色々なものが見えてくる。
 狩野橋で左岸に入り、静岡市街へ。クルマの多い道だが、あと少しの辛抱だ。COCO一番屋でカレーを食べて、ビジネスホテルによって預けていた荷物を回収し、16:15静岡駅へ。約69km。
 17:11、新幹線乗車。1時間40分で京都へ。たった3日で伊吹山は随分茶色くなった。どうやら、寒の戻りの薄い新雪の化けの皮がはがれたようだ。
 のどが渇いた。新幹線からの乗り換えに40分もある。既に入線していた山陰線の特急列車の車内清掃が終わった18時過ぎ、自転車を車両最後部の席を確保し座席の背もたれと壁の間の隙間に入れ、途中下車で改札を出る。駅の外のコンビニで1Lの紙パックのお茶を買って列車に戻る。ホームで買うと量が半分なのに値段が高い。
 18:29京都を出発し、19:54福知山到着。駅を出たら、すぐ輪行袋を開けて自転車を組む。駐車場までは100mほどしかないが、もう輪行袋を担いで歩くのがいやになった。自動車に積むときには再び前後の車輪を外すわけだが、そんな手間などあってないようなもの。帰る前に福知山市内でラーメンを食べる。背広姿のサラリーマンの団体が賑やか。送別会のシーズンか。
 当初の目論見通り富士山を眺めることができた。冬季閉鎖がまだ空けぬ林道もどうにか峠まで到達することができた。東京スカイツリーは、私が訪れた日の午後には混雑のため整理券が発行された。例えば13時ごろにエレベーターに乗るための整理券が11時ごろに発行される、といった感じだ。平日の中では金曜日がもっとも混むようだ。また、4月3日には、強風のため展望デッキ、展望回廊の営業は中止となっていた。目的地に到達できることはもちろん、富士山が眺められてこそこの企画が成功したといえる。絶妙の日程だった。

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コメント

 長編を読ませていただきました。
 静岡から富士は身近な存在ですね。わざわざ東京まで行ってスカイツリーから見るのが面白いです。
 林道の上りがあるからMTBだったんだ。輪行ならランドナーかなと思ったので。
 天気が良くてよかったですね。また、富士山も予定通り見ることができて。
 旅にテーマがあると充実感が出ますね。

投稿: すう | 2015/04/19 07:44

 いえ、違いますよ。コースにシングルトラックはないのでMTBの必要はありません。選択の根拠は楽に輪行するためのみです。本文にも「輪行多様のため」と書いています。
 泥除けがない自転車の輪行は劇的に楽です。折り畳み自転車と全く手間は変わりません(折り畳みのメリットは小さくなることです)。10分で袋に入ります。静岡駅で一度もたついて20分くらいかかりましたが。ランドナーならフォークを抜いて25~30分かかります。フォークを抜かず前輪のみ外して納めるタイプの輪行袋も持っていますが、サイズが大きいので列車の中で置き場に困ります。また、袋もかさばります。2年前の北海道では、ランドナーでも楽に輪行ができるよう、あらかじめ前輪の泥除けとフロントキャリアを外して旅立ちました。しかし、泥除けがないランドナーって見た目が変だし、出発準備にそんな手間を掛けなくてもMTBを使えばいいというわけです。
 邪魔くさくて、ランドナーのフォーク抜き輪行なんか13年(その時も久しぶり)していないし、それ以降ランドナーでの輪行は、大型の袋と泥除けなしの上記2回だけです。当時いつも輪行はMTBでした。
 泥除けのない自転車としては、もう一台クロスバイクを所有していますが、ノーパンク加工によりホイールが重くなりました。
 当方にとっては輪行ならMTB。唯一の飛行機輪行のハワイ島ツーリングもMTBでした。
 一般的には、ランドナーは泥除けがあるため輪行に手間がかかる、という認識だと思うのですが、すうさんの「輪行ならランドナー」の根拠は何でしょうか。これには全く共感できません。
 東京には14年行ってなかったので、そろそろ訪れてみたいなと思っていました。舞鶴・福知山からの夜行高速バスが安いのですが、今回の静岡の旅のオプションとしてしまえばもっと安上がり。何せ、富士までと東京までの乗車券の差額は片道で1300円ほど。ただし新幹線を使ったのでその特急券がかかりましたけどね。
 そうはいっても、東京で特に行きたいところがあるわけではありません。強いてあげれば14年前にはなかったスカイツリー。ならばそこからも富士を見よう、という風になったわけです。

投稿: はいかい | 2015/04/19 09:32

 そういう事ですか。泥除けのあるなしが基準だったんですね。
 僕の頭の中では、ランドナーの輪行が一番”サマ”になるからです。手間はかかるでしょう。
 昔、キヨセで自転車買ったとき、オーナーからワイヤーの外し方やら泥除けの外し方などを教えてもらいました。そのときは輪行はしなかったですけど、ランドナーは輪行で役に立つものというのが刷り込まれたのです。

投稿: すう | 2015/04/20 06:52

 ランドナーの輪行特有の処理は、泥除けとキャリアとブレーキワイヤーとダイナモからライトへの電気系統の配線ですね。すうさんのVigoreランドナーにはダイナモがなかったので電気系統の処理は不要でしたが。サイクルコンピュータの配線の処理もいりますね。優先のものをハンドルに付けている場合は。それからハンドルを外して、フロントフォークを抜いて…。これだけで20分くらいかかります。
 それに対し、泥除けのない車種は、前後のホイールを外すのにたったの1分(実際に計りました)。手間のほとんどは袋に収めることです。
 駅前で店開きしていると人目を感じるので、短時間でサッと作業をしてしまう方がスマートだと思っています。袋に入れてしまえば、どんな車種なのかもわからないし。

投稿: はいかい | 2015/04/20 20:25

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