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2015/02/17

神鍋高原アルペンローズ稲葉から万劫へ

 スキーバブルの'90年代に神鍋高原の穴場の存在だったアルペンローズスキー場。2000年3月をもって営業を終えた。いわば、20世紀の遺産である。標高差360m、シングルリフト3基という、小規模なスキー場ながら、そのコースは変化に富んでいる。、頂上の三等三角点「万劫」から北と東に延びるコースは枝分かれと合流を経て万劫、稲葉(いなんば)という2か所にベースに降り立つ。このアルペンローズと軒を並べる奥神鍋、万場高原、名色高原の各スキー場(ただし名色は年を最後に廃業)は、それぞれ1本の太く長い尾根にゲレンデが配置されている。アルペンローズスキー場も尾根にコースがつけられているのだが、細い尾根と谷が複雑に入り組んでいるため、最大で4つのコースが並行する形である。それぞれのコースは細いものの、ゲレンデ面積は40haで奥神鍋や万場より少し狭いものの、名色よりもわずかに広い。
 なぜ穴場だったかというと、最大の理由は、子供や初心者・初級者が安心して過ごせる広くてなだらかなゲレンデがなかったからである。中級者以上のお楽しみゲレンデというわけで、家族連れや団体には向いていない。
 スキー場が営業を終えてから、何度もアルペンローズを訪れている。登りと下りで別々のコース取りができるため、ほかのスキー場跡地よりも楽しめる。それでも最近は万劫をベースに上り下りしていた。だがこれだと最下部の標高差80mほどを登りと下りで共有する形となり、完全な周回コースにならない。そこで今回は、稲葉から入山して万劫に下山する完全な周回コースで行ってみることにした。
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 アルペンローズスキー場は三等三角点「万劫」を頂上とし、北東にゲレンデを展開している。もともとは、1965年(昭和40年)12月に万劫をベースとする「西神鍋スキー場」として営業を開始した。1970年(昭和45年)12月リフト1基を設置。1年後には上部にさらに1基リフトを増設。そして、1978年(昭和53)年1月、北側の稲葉をベースに1基のリフトが設置され、中腹で西神鍋スキー場と連絡し、併せて「アルペンローズスキー場」が誕生した。
 このあたりの経緯は、豊岡市立図書館所蔵の「神鍋スキー風土記(大江茂著、2001年12月発行)」に記されている。さらに、同書にはこんな記述がある。
 「私有林まで購入して作ったスキー場だが、あまりにも奥過ぎて、その後の発展の模様を聞かない。しかし今後、蘇武トンネルが開通することによって燭光を見出すのではなかろうか。」
 しかしながら、この書が発行された冬、アルペンローズスキー場が営業することはなかった。ちなみに、蘇武トンネル開通はその2年後のことだったが、スキー場利用人口は年々減り続け、その後名色高原スキー場も閉鎖となった。列車からバスを乗り継いでアプローチしていた頃ならまだしも、自家用車で訪れる客がほとんどとなった時代には、1,2分程度の差しか発生しない位置関係はさほど問題ではなかっただろう。むしろ、トンネル開通によって村岡側からの客が来ることよりも、ハチ北高原スキー場が近くなりそちらに流出してしまうという神鍋高原にとってマイナス面のほうが大きいのではないかと思われる。
 2月11日昼過ぎ、その蘇武トンネル手前の国道482号線わきのスペースにクルマを止める。トンネル開通前ここは田んぼで、稲葉集落そばの駐車場からリフト乗り場まで農道を歩いてアプローチしていた。その農道を寸断する形で蘇武トンネルへとへと続く国道が敷かれたというわけだ。
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 但馬地方などに大雪警報が発令された2日前を中心に積もった雪は、まだかろうじて新雪の体をなしている。警報が解除されたとはいえ、昨日も午前中を中心に雪が降る寒い日だった。よって、新雪専用の太い板を使う。シールを貼って路肩の雪の上に乗り上げる。今日は曇天、雲を透かした太陽が満月のようだ。
 スタート地点は標高360m。平坦な田んぼの上を歩いて、稲葉ゲレンデに取り付く。浅い谷に作られたすり鉢状のゲレンデだ。上部は二つの尾根コースに分かれ、向かって左が「しゃくなげコース」で、右はしゃくなげコースから分岐した「馬の背コースだ」。しゃくなげコースを行くが、ショートカットして落葉樹林の尾根を直登する。こうなると、もうスキー場という人工的な施設の中でなく、自然の地形を歩いている雰囲気となる。しばらく登ると林が疎らになった。山に還りつつあるしゃくなげコースのようだ。なぜ、すんなり尾根に沿ったコースにしなかったかは、帰宅してからゲレンデマップを見てわかった。東隣の「あすなろゲレンデ」下部への連絡コースを分けていた関係だ。コースを仕切る谷の浅い部分を利用して連絡コースが作られている。
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 さらにひと登りでしゃくなげコースと馬の背コースの分岐点。さらにそこからあすなろゲレンデ上部への連絡コースも分岐している。現在は既に跡形もないが、稲葉からのリフトの降り場であり、このスキー場の交通の要衝である。
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 目指す三角点「万劫」ピークが間近に見えてきた。しゃくなげコースを登って行く。コース中が既に潅木の林になっている区間もあるが、頂上までの数百mはコースそのまま。北向き斜面なので雪質もいい。
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 スタートから2時間足らずで標高698mの頂上に着いた。まずザックをおろし、シールを剥がして登ってきたしゃくなげコースを滑る。アンテナ群を頂いた三川山の懐に飛び込んでいくようだ。雪質が良くて気持ちいい。あっという間に潅木帯に到着。シールを貼って山頂に登り返す。
 ザックを背負って下山の準備。最も東に位置する「ススキコース」へ。今度は神鍋山へと急降下するような滑降。20~30度の手ごろな斜度で極端にコース幅が狭くなることもない、楽しいコースだ。潅木の疎林になっている部分があるが、それもまた楽しい。少しクラストしている部分もあるが、「こしまり雪」または「しまり雪」で安定して雪崩の恐れも少なく、なおかつ滑りやすい非常に良い状態。
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 楽しい時間は少なく、潅木を掻き分けながらあっという間にあすなろゲレンデ下の平原に降り立つ。標高は430m。この平原には万劫からあすなろゲレンデ上部へのリフトの中間駅があった。中間駅といえば大抵は途中下車用である。万場高原やわかさ氷ノ山スキー場の各頂上リフトそうで、上部の急斜面を避けたい初級者のため、あるいはゲレンデの状態が悪く上部が閉鎖されている時のためである。ところが、アルペンローズスキー場のこのリフトの中間駅は乗車専用だったのだ。というのも平原から下は連絡コース(下山コース)。要するに非除雪のダブルトラック(車道)で、滑って楽しいわけではない。しかも、斜度のない雪原を歩いて横切らねばならない。そこで乗車用の中間駅が設置されていたと言うわけだ。ちなみに、朝、客が次々とゲレンデを訪れる時間帯には、始発の乗り場ではひとつ置きに乗車し、中間駅から乗車する人の席を空ける。
 ちなみに、頂上へ登ろうと思えば、あすなろゲレンデ上部で頂上リフトに乗り継がないといけないが、このリフトの乗車待ちの仕方も独特だった。前述のとおり、細い尾根にコースが作られているため、リフト待ち行列のスペースも狭い。1列目の行列が限界に達するとその隣に同じ方向を向いて2列目を作る。列の間はロープで仕切られていて、1列目なくなると係員のホイッスル吹鳴と共にロープが持ち上げられ、2列目がそのまま横に移動して1列目となる。ヘアピンカーブの蛇行した行列を作ってもスペースは変わらないような気がするが、並んでいる赤の他人同士が、ホイッスルの支持により息を合わせて足を踏み出す様子は思い出しても面白い。やがてリフト待ちの行列ができることがなくなり、スキー場自体もなくなってしまった。
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 さて、話を現在に戻す。あすなろゲレンデしたの雪原を横切り、連絡コースへ。今までは入山下山ともに万劫であすなろゲレンデからしゃくなげコースを登り、ススキコースを下りていた。よって連絡コースを往復していたが、今日は完全なる周回コース。未踏の連絡コースを下って、万劫の集落へ降り立つ。標高350m。
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 雪に埋もれそうな小さな集落の狭い路地をスキー板を担いで歩き出す。1km弱の車道歩き。特に後半は交通量のある国道で、歩道はなく、しかも路肩は雪積もっているためクルマが近い。稲葉川がなければ田んぼの上をスキーで歩くのに。宮沢賢治の「雪わたり」のように。

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コメント

 アルペンローズは懐かしい。比較的すいているのでよく行きました。
 たしかススキコースかな、広めのやや急斜面だったような。急斜面を滑らないと上手くなれないと思い、頑張って滑ってました。
 その頃は、スキー場のことなんとも思っていなかったけど、今行くと狭いと思ったり、細いコースと思ったりするんでしょうねえ。

投稿: すう | 2015/02/22 12:41

 ススキコースは、アルペンローズ随一のダウンヒルコースです。独立したコースなので、狭い部分がないのでしょう。木が生えてきているのが、かえって楽しめます。

投稿: はいかい | 2015/02/24 01:00

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