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2015/01/07

神楽ヶ峰の遭難事故について

 この年末年始も雪山での遭難事故のニュースが世間を騒がせた。
 中でも印象的だったのが、新潟県の神楽ヶ峰でのスノーボーダーの遭難のニュース。

 40代の男女3人のスノーボーダーが、2日朝かぐらスキー場の宿をでてスキー場のゲレンデ最上部から神楽ヶ峰に登頂し、滑走しようとして道に迷った。ちなみに、登山届を提出しておらず、ゲレンデ最上部に常駐するパトロール隊員には「登山届けを提出している」と偽ってスキー場外に出たとのこと。持参していた登山用の携帯スコップで掘った雪洞で二晩を過ごし、4日午前、捜索のヘリコプターににより発見、救助された。

 情報源NHKWebNews http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150104/t10014422961000.html
 3人とも軽い凍傷とのことで、病院で治療を受けた後に警察署で記者会見が行われ、その映像がTVやインターネットで流された。

 同じようにスキー登山で雪山に入る身として、とにかく生還されたことは良かった。そして、人命救助に尽力された新潟県警の方々にも頭が下がる。

 しかし、心配なのは雪山に入ることが、また非難の対象になってしまうことである。
 よくわかっていない短絡的で無責任な個人ネットユーザーによる批判は読み流していいとして、TVのニュース番組等でも遭難した人に批判的な編集が一部でなされていたように感じた。それは、まさに現場で救助されているときの映像(体に小型カメラを見に付けて撮影しながら作業を行っている)で、県警の救助隊員が当事者に対して「コース外滑走なんかしたら駄目じゃないですか。こっちも命がけなんだぞ。なにを考えているんだ」と怒鳴りつけているシーンが流された。
 前後の文脈はなくそこだけを断片的に挿入されたシーンなので、スノーボーダーがとても悪いことを犯してしまったような印象を受ける人もいるかもしれない。
 ちなみに、登山届を提出している、していないにかかわらず、雪山に入ることを制限する法律等はない。地域によっては自治体により条例で定められているが、この神楽ヶ峰では登山届の提出は任意である。そして自己責任で雪山に入山することも個人の自由である。つまり、登山届の提出も入山の制限も、スキーパトロール隊員や警察の救助隊員であろうと強制できるものではない。スキー場以外の登山口から入山するのと同様である。
 ただし、自力で生還できなければ行動の自己責任は破綻。その責任を肩代わりしてくれている救助隊員からの注意が、強い口調になることは間違ったことではないと思う。しかし、それは当事者同志の中で行われればいいこと。一部の言葉だけを切り取って報道することは、誤解を生じかねない。

 インターネットの掲示板のまとめサイトを見てみると、「雪山遭難=無謀・軽率」という頭ごなしの批判や、40代という年齢、髪型を揶揄する内容の書き込みも見られたが、記者会見で言い逃れをせずにひたすら反省とお詫びに徹する姿勢を好意的に捉える意見もあった。

 実際、ビバーク(不時野営)で二晩を耐えしのぎ、救助されたその日に(丸二日ろくに寝ていない状況で)3人そろって記者会見に応じていたのだから、肉体的にも精神的にも比較的強い人たちだったといえるのではなかろうか。それに、最上部のリフトが動いたので急遽入山した、とのことだったが、装備や雪山技術の面での少なくとも最低限の備えはあったといえるのではなかろうか。記者会見では「雪山の恐ろしさがやっとわかった」と反省していたが、元々わかっていたからこそ生き延びたのだと思う。

 かぐらスキー場から神楽ヶ峰へは、2006年の5月の連休にスキー登山したことがある(もう9年も経つのだ)。圧雪ザラメの歩きやすい状態だったので、1日に2回登頂し短いコースと比較的長いコースの2本を滑った。お手軽コースと言うわけである。その日はたくさんの人が登頂していた。
 この1月2日にも、30人ほどが入山していたという。無事に戻ってくることができたかどうかで、大きく明暗が分かれるわけである。

 まあでも、遭難なんてろくなことはない。先日のアバランチナイトでもいわれていたとおり、雪山に行く人間と、そうでない人間との間で、考えは折り合わない。厳しい意見をあびせられることも仕方ないこと。
 それに、当事者だけでなく、その地域に対する風評にも影響する。例えば「遭難の多い山」などという不名誉な形容をされてしまう。そして、同じことを楽しむ同志も厳しい目で見られ、条例等で活動が規制されてしまう可能性も出てくる。
 明日はわが身。気をつけなければならない。

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コメント

遭難の類の中でも”道に迷った”そうなので怪我も無く生還できたようですね。その日は二日間停電があり、報道については一部しか知りません。ただ、コワイ気圧配置でしたね。ホワイトアウトになったか?吹雪か?目標を見失ったら瞬時に方向が判らなくなりますからね。

過去に四国石鎚山で救助隊警官が亡くなられた遭難事故、雪山ではなかったが報道(遭難者の発言内容)が操作されていた部分があるというのをどこかで見た。
ただ、被害が発する場所であれば入山に関してはルート、コース外を強制的に禁止にするのも一案。規制に留めておくか地元が考えるべきことだろうが、今回も救助費用の問題が取り上げられていること。
スキー場周辺であればビジネスの部分も絡んできますからお互い考える必要があるべきだろうとも思います。

投稿: 大江山の仙人 | 2015/01/08 12:42

 ニュースを聞いて、GPSレシーバを持ってなかったのかな、と思いました。まあ、電子機器だから電池切れとか故障とかいうこともあり得ます。だから当方は、予備電池はもちろん予備機も持って入山します。
 記者会見では、雪が深くて道に迷った、と言われていましたね。山頂までは一本道ですから先行トレースをたどったのでしょう。その後、彼らだけが中尾根というコースを目指したということなので、トレースはなく、降りる方向を誤ったということのようですね。当然、視界不良の場面もあったでしょう。
 ミスコースに気付いたら、登り返して山頂に戻るのが鉄則ですが、ラッセルが深くて戻れなかったのかもしれません。
 雪山登山(スキー・スノボ含)自体は悪いことではないのだから、安易に入山規制はできませんよね。以上、想像でした。事実ととらえないでくださいね。
 ちなみに、今回の遭難場所は国有林とのこと。国有林では、危険区域を除き、行楽、レジャー目的の入林の場合、(管理局への)申請不要とのこと。つまり規制はないということ。注:警察署等への登山届提出は呼びかけられています。
情報源:中部森林管理局
http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/apply/nyurin/index.html
 今回は滑落等ではなく、道迷い遭難であり、危険区域とはみなされないのではないでしょうか。

 費用の問題は何かありましたか。
 県警のヘリコプターの費用を含め、警察や消防の経費は請求しない。請求されるのは民間が動いた分のみ。具体的には、徒歩による捜索部隊に参加していた民間の救助隊員1名の人件費。スキー場の関係者2名も参加していたことで、こちらの分を請求するかどうかはスキー場が判断する、と報じられていました。いずれにせよ命が助かったことを思えばわずかな額だし、これまでの事例と同様のものなので、当事者たちも受け入れて支払うものと思われます。

投稿: はいかい | 2015/01/11 18:32

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