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2014/03/15

氷ノ山大倉谷右俣滑降「パーフェクトな一日」

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 「立春寒波」からひと月ぶりに寒波がやってきた。「啓蟄寒波」だ。相変わらず平野部の積雪量は少ないが、山にはまとまった量の降雪。
 3月11日、ちょうどひと月ぶりに氷ノ山を目差す。来シーズンまでおあずけか、とあきらめていた大倉谷右股滑降。快晴の空、放射冷却で日陰は路面凍結。豊岡市出石では交通事故が起きていた。パトカーはまだ。事故車両を避けようとしたら対向車が来てブレーキを踏むと、ABSが作動するばかりで、ほとんど制動がかからない。余裕を持って対向車は止まってくれたし、道幅もあり元々スピードも出していなかったのでさほど危険と言うことはなかったが、やはりブレーキが効かないのは焦る。現場は直線で、凍結区間はわずか。普通ならば通り過ぎてしまうような所だが、事故が起こったということは何かブレーキを踏むか、ハンドルを切るかの状況になってしまったのだろう。二次的な事故が起こらねばいいがと思いながら、現場を跡にする。その後、養父市大屋町の若杉峠は当然のことながら、凍結防止の流水がある国道29号線戸倉峠やわかさ氷ノ山スキー場への登りも雪道。気の抜けない運転で、スキー場到着は11時を過ぎた。イヌワシゲレンデ下の無料駐車場は除雪されていなくて、その奥の仙谷アルパインゲレンデ下の無料駐車場にクルマを入れる。
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 今シーズンはもう出番がないと思っていたセンター100mmの太板、粘着力がなくなり昨日グルーを塗り直したシール、アイスバーンの登行に備えてのスキーアイゼン、そしてビーコン等雪崩対策の装備と準備を整えて、樹氷スノーピアゲレンデへ。スキーパトロールの登山届に記入してリフトに乗り込む。
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 ゲレンデトップからシール登行に向かない密度の濃い林間の急登。つぼ足ラッセルで登行開始。9日には沢山の人の入山があったとのことだが、昨日の雪ですっかりトレースは消えてしまった。本日は入山者が少なく、私の前には3名のボーダーが登っていて、みなスノーシューを装着。新雪の下が、今シーズン踏み固められ続けたトレース(舗装路)ならばくるぶし程度で済むが、それを外すともっと深く、ときには太股まで潜ってしまう。つまりは、先行者達がどれだけ新雪の下の舗装路を踏み当てていてくれるかが、私の運命の分かれ道。まさに、他力本願。
 つぼ足区間を半分ほど登ったとき、背後から単独の男性が追いついてきた。スプリットボードを背負い、スノーシューを履いている。スノーシューとシール歩行可能なスプリットボード、二重の装備のようだが、本日はスノーシューの効果は絶大だ。その彼と、本日の滑降コースについて話しをする。氷ノ山山頂と三ノ丸の間、南北に延びる主稜線の西側に並ぶ谷のどれを滑り降りるか。昨日の新雪は、今朝からの直射日光と気温上昇で結合が進んでいる。急斜面で雪崩には要注意の大倉谷を狙えるのではないか、という風な流れとなった。最終判断は、それぞれの自己責任で結論を出す。
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 スノーシューの彼に道を譲り、のんびりと行く。青空をバックに樹氷が美しい。山頂も、三ノ丸も新しい白装束を輝かせている。ただし、大山はぼやけていて、時間の進行とともに霞が深まっていく。昨日の真冬から、今日は一気に春になった。
 早めにシール登行に切り替えたいところだが、前回の粘着不足による苦労がトラウマとなり、シールを使うのがためらわれる。それでも、尾根が広く緩やかになったところでシール登行開始。すると、問題なく歩ける!シールってこんなに効果があるんだ。ラッセルしなくていいって、凄く楽。と、当たり前のことを再認識する。
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 美しい樹氷をまとったブナ林を抜け、大雪原へ。空の青と、台地の白のコントラストが素晴らしい。やはり、毎年この風景を見ないと気が済まない。風紋が昨日の荒れ具合を示している。
 先ほど追い越した彼は、スノーシューからスプリットボードのシール歩行に切り替えたようだ。トレースは短めのスキーのようで、下りでは滑走して、ときには軽くターンもしている。実際に歩いたり、滑ったり、あるいは板を分割したりしているところを見られなかったのが残念。
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 登り基調のアップダウンを繰り返しながら三ノ丸へ。ここからはやや下り基調のアップダウン。ワサビ谷の頭ピークに立つと、はるか前方に人影が見えた。どうやら、追い越していったスプリットボーダーのようだ。ワサビ谷と大倉谷を分ける尾根のピークの向こうに消えた。どうやら大倉谷を目差すようだ。ならば、私も行く方向へと気持ちが傾く。
 ワサビ谷もそうだが、大倉谷も右股、左股に分かれている。一昨年の撤退を経て左股は昨年滑降済み。今回狙うは右股。ワサビ谷との仕切りの尾根を越えたところで行動食を採りながら雪や斜面の様子をチェック。昨年右股も滑ろうと再訪したが、アイスバーンのため撤退してワサビ谷に変更している。本日はどうか。西よりの風が強く吹き付け、樹氷の粉が降りかかってくるが、まだ雪面はアイスバーンにはなっていない。それでいて、前述の通り結合が進んで安定した粉雪で雪崩の危険も低い。最高の条件ではないか。はやる気持ちを抑えながら、シールを外して滑降の準備。
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 上部はさすがに風がまともに当たってアイスバーンになりかけていた。エビの尻尾も特大だ。雪の様子を見極めながら、急かつ狭いノドの部分に迫る。ここが、難関である。アイスバーンのガリガリでも、流れ易いさらさらでも危険。しかし、今日はガリガリでもさらさらでもない程良い状態だった。慎重にクリア。すると待っていたのは広く立木が少ない粉雪の楽園。恐怖から喜びへと、感情の針が振りきれる。先ほどのノドは、この楽園への狭き門ということか。
 スプリットボードのシュプールと絡んだり離れたりしながら快適に滑る。ひと月前のワサビ谷のような積もりたてのさらさらではないが、それでもフワフワ感に溢れた粉雪だ。つかみどころのないさらささ雪より、存在感があり板の浮力は大きい。また、この谷はまっすぐ伸びているため上部は展望もあって、今日のような晴れた日には宙を舞うような気分も味わえる。
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 疎林に入れば落ちた樹氷に覆われた雪面に変わる。そして、また標高を下げると風の影響を受けず樹氷がつかないのか、またなめらかな雪面に。滑る分にはどちらも影響はなく、快適。林間で、左股と合流。左股も同じようではあるが、難所を抜けると楽園が現れる劇的な展開がより際立っているので、右股の方がおすすめ。
 さらに下って、仙谷と合流する手前では、仙谷との仕切の尾根の下に小さなデブリがあり、時折さらさらと小さな雪崩も起こっていた。
 仙谷と合流して、堰堤を二つ越える。積雪は十分で、右岸でも左岸でもどちらからでも越えることができた。
 しばらくすると沢が割れてきて、杉林の手前で左岸をはい上がる。板を外して急斜面をつぼ足で登り、また板を付けて杉林へと向かう。今は西日が当たっているが、西向きの谷の下部のため日陰の時間が長かったようでここもいい雪のまま。転倒したら粉雪が舞いあがり、それもまた幸せ。
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 杉林に入ったら、すぐに仙谷アルパインゲレンデ。滑りの核心部が終わるとすぐにゲレンデに出るのが、隣のワサビ谷よりも大倉谷のメリットといえる。
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 圧雪されているスキー場のゲレンデは、雪が堅く締まって滑りにくい。ずっとフワフワ雪の上にいたので、そのギャップについていけない。
 クルマのそばまで滑って、終了。スキーパトロールに下山報告をする。スプリットボーダーは30分ほど前に下山したそうだ。
 帰り道は、道谷集落から若杉峠にかけて圧雪が残っていたが、それ以外はノーマルタイヤでも大丈夫な道。往路ほどの緊張はない。
 というわけで、展望、樹氷、粉雪とすべてそろったパーフェクトな一日を過ごすことができた。おそらく今シーズン最後、もしかすると今シーズン一番の好日をゲットすることができた。

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コメント

 春パウダーゲットですね。
 大倉谷はワサビ谷よりも疎林に見えますが、ワサビ谷がメジャーなのはなぜ?と思いました。斜度が緩いからでしょうか?
 太板が活躍したみたいで何よりです。自分のはセンター9cmですが、それでも新雪で浮く感覚があるのにそれ以上だから、違う乗り物なのかもしれません。
 動画は見ていて楽しいです。雰囲気もよくわかります。

投稿: すう | 2014/03/16 13:57

 大倉谷は「狭き門」だからでしょう。
 2月11日にシールの不調で断念した時点で今シーズンの滑降を8割諦め、その後2月中旬以降の寡雪に99パーセント諦めていました。
 3月に入ってしまうと、普通の寒の戻りではアイスバーンに薄く新雪が乗った危険な斜面が出来上がるだけ。ドカ雪が降れば雪崩の危険。それが今回は、一気に降りすぎずじわじわと積雪が増す、理想的な、真冬のような持続性のある寒波。虎視眈々と狙ってました。
 平日なので声をかけなかったのですが、まさかすうさんも別の山に行っているとは。しかも、週末に自転車で長い距離を走る予定があるのに、標高差1000mを超えるラッセルに真っ向から勝負を挑んで行くとは。どこまで自分を追い込むのでしょう。全く、恐れ入りました。

投稿: はいかい | 2014/03/16 19:31

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