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2012/10/26

南アルプスと中央アルプスの南の端っこ(2)

■南アルプスの端っこ「天竜スーパー林道と秋葉山」
 7日朝6時に宿を出る。宿のすぐ近く
の牛丼屋で朝食。明け方に雨が降ったようで、クルマが濡れている。コンビニに寄って、「シクロツーリスト」の今日の予定のコースマップ、プロフィールマップ、走行のタイムテーブルなどが載っているページをコピーする。磐田I.C.を過ぎてさらに北上すると、すぐに家はまばらになり茶畑が目立つようになった。少し西の天竜川左岸沿いの道にレーンチェンジするタイミングを逃し、気づけば磐田原という台地にいる。天竜川沿いとは標高差が50m以上もある。真上は灰色の雲がかかり、小雨がぱらつくが前方の空は明るいのであまり不安にはならない。浜松市の旧豊岡村に入って茶畑と田園風景の中、天竜浜名湖鉄道と並行して走り、ようやく天竜川沿いを往く。
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 2007年の合併で、太平洋に面した浜松市は、南アルプスの南端長野県境までの市町村を合併し巨大化、政令指定都市となった。本日自転車で走る天竜スーパー林道を含む周回コースは、すべて浜松市天竜区内である。天竜区は、旧天竜市、旧春野町、旧佐久間町、旧龍山村、旧水窪町の旧五市町から成るが全国の政令指定都市のすべての区の中でもっとも人口も人口密度が低いのがこの天竜区だそうだ。京都市の左京区や右京区も広大な山村エリアを含むが、その一方で京都盆地の過密地域も含んでいる。天竜区の南端の二股は、旧天竜市の中心街で区役所や駅などがあるが、それでもずいぶん長閑な雰囲気である。道路の案内には、秋葉神社とある。
 天竜川は深い谷となり、船明ダムやのどかな集落を見ながら蛇行する。やっと秋葉ダムが見えてきた。だむの真下に広がる家並みは、旧龍山村の中心部だ。トンネル内の交差点を右折して、ダムの上を右岸から左岸に渡ると駐車場がある。ワンボックスカーが3台に3人の中高年の男性。釣り人だろうか。車中泊をして、今度は大井川沿いに移動するようだ。
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 自転車を下して出発準備にかかる。ここまでの道中でぱらついていた雨は止んだが、上空にはまだちょっと振りそうな雲。肌寒さもあってウィンドブレーカーを着て、合羽をフロントバッグに入れておく。右岸の国道152号線でなく、左岸の道を行くがスタートしてすぐに「道路崩落で通行止め」とある。集落はなくクルマが全く通らない左岸の道から、対岸を見れば集落や生々しい土砂崩れの後が見える。天竜川の谷は大きく深く、はるか上方の急斜面には数軒の家がへばりついている。まるで、四国山地を思わせる眺めだ。なだらかな丹波高地や中国山地のそれも日本海側を見慣れたものには、九州山地、四国山地、紀伊山地、そして静岡県内の南アルプスの太平洋側には、共通の雰囲気を感じる。険しいというだけなら北アルプスだってそうなのだ。しかし、山は険しくても雪はあまり深くないせいか、どんどん奥に入っていっても集落があり田や畑がある。豪雪地なら、ひと冬に何度も孤立してしまいそうなところ、雪崩にのまれそうなところに当たり前に家がある。急勾配にへばりつく数軒の家なんかその典型だ。しかしながら、太平洋からの南風がまともに当たるこれらの山地は、止まずに降り続く雨の降り方により近年日本でも頻発している深層崩壊の危険地域である。
 しばらく走ってからつり橋で右岸にわたる。シクロツーリストの記事と同じように走ることとなる。右岸の国道152号線は、しばしばクルマが通る。さらには、7,8台のロードレーサーの集団が颯爽と追い抜いていった。
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 国道沿いには集落が点在し、天竜川の流れと懐かしい雰囲気の家並みを交互に見ながら走る。いつしか空は青く晴れ渡り雨の心配は吹っ飛んだ。気温もちょうどよい。ウィンドブレーカーは走り出してすぐに脱ぎ去った。
 真っ赤な橋を渡り、今度は左岸を走り出すとすぐに旧水窪町に入る。久しぶり(いや自転車で走り出して初めてか)の信号の交差点で国道473号線が左に分かれ、それとともに天竜川の本流も西へ。ここからは、支流の水窪側の流れを左下に見ながら行く。はるか下の河原には釣り人の姿が見える。ダムからかなり遡り、流れがあるので水も透き通っている。
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 飯田線が西から合流してくると、駅の周りの集落はにぎわっているように見える。と思ったら、秋祭りだ。家の玄関には提灯が飾られている。高台の神社の方からは笛や太鼓の音が聞こえ、半被姿の人も見える。秋葉街道の秋祭りだ。
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 秋たけなわの城西駅周辺の集落を抜け、川沿いを行くと、大きな集落が見えてきた。向市場だ。確か今日2つ目、そして最後の信号の交差点を右折して東に向かう。秋葉街道に別れを告げ、目指すは県道389号線の山住峠。標高差800mを超える登りにとりつく。集落はすぐに終わり、そして田んぼもなくなり、渓谷沿いを延々と上っていく。交通量は一気に少なくなる。岩壁に張り付くように流れ落ちる布滝を過ぎると河内浦という小さな集落。小休止して、軽く行動食を口にする。
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 集落をすぎると、道は山肌にへばりついて蛇行を繰り返す。シクロツーリストの記述通り水場があるので、空になったペットボトルに汲む。峠の手前には、「みさくぼの名水・山住の水」。これが今日のコース最後の水場とのことなので、ここでも補給。
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 峠には山住神社や茶屋があってクルマやオートバイが止まり、人が歩いている。神社にお参りしたら、いよいよ天竜スーパー林道だ。西側の天竜川本流および水窪川と東側の気田川に挟まれた南アルプスの南端の小山脈。その1000~1300mの稜線に天竜スーパー林道が走る。山住峠とは、旧水窪と旧春野を結ぶ県道389号線にとってのもので、それに直交するスーパー林道に入ればまだまだ登りが続くのである。目指すは、井戸口山付近の林道最高地点、標高1280mである。途中、腹が減って、道端に座っておにぎりを食べる。
 林が続いて、絶景スカイラインという訳にはいかないが、さすがに稜線近くだけあって時折周囲の山々が見える。しかし、高い山は雲に隠れている。また左には気田川の谷をはるかに見下ろす。あちら側も走ってみたいものだ。
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 ようやく最高地点へとやってきた。向市場からの標高差はざっと1000m。秋葉ダムからだと、1200m近く上っている。この先スーパー林道は、いったん標高差200m近く下ってから100m以上登り返す。「天竜の森」という自然観察や野外活動の施設が次の目標で、これをすぎればお待ちかねのダウンヒルとなる。しかし、これが広く、つまり林道に沿って細長く、着いたと思ってもなかなか下りは始まらない。展望台からは恵那山や御嶽山が見えるとあるが、恵那山は薄く、御嶽山は見えているのか見えていないのかよくわからない。
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 それでもようやく登りは終わり、ウィンドブレーカーを着てダウンヒル開始。標高差400m近く下って、秋葉ダムへと下る道の分岐へ。スーパー林道はまっすぐ東雲名という天竜川沿いの集落へ下るが、それだとダムより下流に行きすぎるのでここで左折するシクロツーリストの記事通りをたどるつもりだ。つまり、秋葉神社にはよらないつもりだった。しかし、そこの看板に「秋葉神社駐車場まで900m」という看板が目に付いた。すぐじゃないか。これを逃したらもう一生こないかもしれない。
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 というわけでついつい、秋葉神社へ向かってしまった。しかし、1km足らずの距離ながら、標高差は50m。駐車場から大きな鳥居をくぐって始まる参道は階段が延々と続く。結局神社までさらに標高差70m。秋葉山の山頂付近まで上ったというわけだ。神社は立派で、しかも徐々に霧がかかってきて神秘的。お参りを済ませたら急いで下山。参道の常夜灯に明かりがともった。
 ところで、かつて何度も大火に見回れた江戸では、明治の初めに明治天皇の勅命により、鎮火社という神社が設置された。しかし人々は火防(ひぶせ)の神である「秋葉大権現(秋葉神社)」と思い秋葉さんと呼んだ。そして、その神社の周辺の延焼を防ぐための空き地を秋葉原と呼んだそうだ。つまりは、今をときめくAKBの由来の大元はこの秋葉神社ということになる。
 さあ、急いでくだらなくては。ウィンドブレーカーを脱いで、ゴアテックスの合羽を羽織り、グローブは指先まで覆われたものに変える。標高差700mの急な下りだが、途中の尾根を越える小さな登り返しがきつい。一気にダムまで急降下。
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 累積標高差は1500m位はあるだろう。秋を満喫、充実の76km。それに、2005年と2007年のこの時期に、地蔵峠、青崩峠、下栗の里、しらびそ峠などを走った、秋葉街道シリーズの完結編でもある。
 自転車をクルマに撤収し、今宵の宿「中津川ふるさとユースホステル」に電話を入れる。ごめんなさい、どうがんばっても夕食には間に合いません。(つづく)

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