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2012/03/03

伯耆大山の展望台「若杉山」(雪山編)

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 鳥取県三朝町の若杉山(わかすぎせん)を4ヶ月ぶりに訪れた。標高1020mの低山に片道200km近くもあるアプローチを経て何度も通うのか。それは、山頂からの大展望がお目当てだからである。360度の展望はもちろんだが、何といっても大山の姿がとにかく圧倒的な存在感。若杉山から見ると大山の手前に蒜山の山並みが見える。それはちょうど、大山という横綱が、上蒜山・下蒜山という太刀持ち・露払いを従えているかのような絶妙な位置関係。そして、大山・蒜山の激しい隆起とは対照的に、脇になだらかに広がる蒜山高原。
 秋はランドナーを担ぎ上げる山岳サイクリングだったが、冬場はもちろんスキー登山。秋に訪れたときに、立木が伐採された山頂部はスキーにちょうど良い斜度のオープンバーンとなることがわかっていた。
 ただし、丹後からは遠い。「雪があって、滑りやすい雪質で、大山が見えること」という条件をはるか彼方から見極めなければならないし、現地に行って「条件が悪いからやり直し」というわけには行かない。幸いなことに、今年の冬は十分な積雪に恵まれた。ただし、天気が悪い。なかなか決行に踏み切れないまま冬が終わろうとしている。平日ながら休みを取ることが可能な日と、そこそこ天気がよい日がどうにか重なって、3月1日に勝負に出た。
 7時前に丹後を出発。兵庫県の但馬海岸、鳥取市、白兎海岸を越える。とぎれとぎれではあるが無料の高速道路ができてずいぶん早くなった。予報では曇りで夜に雨だが空は明るく、鳥取市街から進行方向に白い大山が見えた。近頃テレビのCMで有名になった羽合から内陸には入り倉吉、三朝を過ぎて岡山県との県境、つまり中国山地の中央分水界付近へ。中央分水界を縫って東西に伸びる国道482号線から県道に入り、大谷川に沿ってどんどん山の懐へと入っていく。雪深い山間部にも、小さな集落が点在し、その再奥の大谷集落までしっかり除雪されていた。国道がすでに山間部にあるのに、その国道から8.5kmも細道をたどり、大谷集落の標高は600m弱もある。丹後では、昭和38年の豪雪により昭和40年代以降山間部の集落がどんどん廃村となっていった。また廃村にならないまでも、積雪期のみは山を下りて麓で生活する集落もある。それを考えるとずいぶんと頑張っている集落だと感心する。
 除雪の限界点にはクルマが一台止まっていて、その先の雪面にはカンジキの跡。登山者かと思ったが、クルマには釣り関係のステッカー。釣り人のようだ。出発の準備をしていると、その釣り人が戻ってきた。魚籠の中の五匹のヤマメを見せてくれた。2時間ほど釣っていたそうだ。「もう飽きたから帰る」と言うが、表情は満足げ。
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 さあシールを張ったスキーをつけて歩き始める。背後には立派な雪山が見えている。後で確認したら蒜山の連峰だった。まずはカンジキの跡が付いた渓流沿いの車道を行く。日が差して熱いくらいだ。車道には30㎝程雪が積もっているが、脇には雪の壁ができていて、たまにこの道は除雪されているようだ。その除雪とのタイミングが合えば、もっと奥までクルマで入ることができるわけだが、それは時の運というしかない。下山時に確認したら、秋にクルマを停めた標高680mの辺りまで除雪の跡があった。
 しばらく歩くと廃屋群がある。屋根には分厚く雪が積もって、軒が折れている。家に帰ってから秋に撮った写真と見比べると、この冬の大雪のせいか傷みがさらに進んでいた。
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 そのまま車道を進めば、無雪期であれば舗装路は荒れたダートに代わり、さらに標高680mから上はスズキジムニーならかろうじて通れそうな狭くて急でヘアピンカーブが連続する林間の1.5トラックとなる。秋のランドナーの時はその道を押して登ったが、今回は廃屋群の裏山を登って尾根伝いのコースを試してみる。しかしこれが大失敗。密度の濃い植林に苦戦する。木々の間が狭く、通れるところを探すのはまるで迷路を行くよう。それも急勾配。やや広い空間があると思ったら、その下には雪に倒された幼木が埋まっていて落とし穴に落ちる。
 植林斜面に苦しんでいるとき、下の方から何か作業をしているような音が聞こえた。カーン、カーンと何かをたたいているようだ。人が入山してきている気配はないし、どういうことだろう。しばらくしたら、ガリガリメリメリバタンという何かが崩れ落ちるような音。雪の重みで廃屋が倒壊したのかもしれない。
 ようやく尾根に上がり広葉樹の疎林になったが、そこで車道から続いている1.5トラックが合流しているのでおとなしくそちらに乗り換える。つづら折れの林間を超えると、一気に視界が開ける。まるで森林限界。感動の瞬間である。秋に大草原だったところが、今は大雪原。正面にはドームのような若杉山がどーんとそびえ、「どこでも好きなように滑ってくれ」と言わんばかりの全面オープンバーンを見せつけている。そして左後方を振り返れば、蒜山を従えた大山がみえる。やっぱり大山が見えることがこの山の値打ちだ。
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 若杉山に取りつく。雪は表面が緩んだザラメで、まずまず滑りやすそうだ。予報通り天気は下り坂で、いつしか日は陰り大山も徐々に山頂部が隠れていく。
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 最後は雪庇の付いた痩せ尾根を通って広い山頂部に到着。山頂を表す看板が雪原に立っている。積雪は1mもない。サンドイッチとパンを食べる。
 大山は最初に見えた時よりかなり薄くなったが、蒜山を含めた山塊はまだまだ存在感がある。そこから南に目を向ければ、津黒山が近い。東には岡山の県立森林公園の稜線。津黒山と県立森林公園の間の田代峠の向こうには泉山。また森林公園の稜線の向こうにも遠く白い峰がのぞく。東山や氷ノ山だろうか。天気は西から下り坂。よって東の方が遠くまで見えているようだ。
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 山頂の看板の脇でシールを外しザックもおろして、なだらかな山頂周辺を軽快に散歩。ステップソールがあるから少々の勾配は平気なのだ。目指すは山頂のすぐ北側の露岩。秋にはこの上にランドナーを立てて写真を撮ったので、今度はスキーを立てて撮影するのだ。山頂に登る間に大山本峰はすっかり薄くなった。秋にも天気下り坂で、同じような感じだった。
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 展望を楽しんだら下山しよう。ザックを背負い、なだらかな山頂そして痩せ尾根を経て、大斜面に出た。表面が緩んだザラメで、そこそこの勾配があって、楽しめる。何より大山に向かってテイクオフするような感覚が気持ちいい。ヘルメットカメラをクルマに忘れたので、デジカメを動画モードにして手に持って撮影する。
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 大斜面の下部で、2回転倒。1回目はスライディングでノーダメージだが、2回目はクラッシュ。立ち上がってしばらく滑ってから板を外して雪面に立ててシュプールを撮影しようとしたら、白い雪に赤い鮮血。暖かくて自転車用の指切りグローブを着用していた右手の小指を切っていた。スキーのエッジだろうか。痛みは感じていなかったが、結構出血している。あわてて絆創膏を張る。ちなみに、その日の夜から翌日にかけての方が痛みが激しかった。
 あっという間に雪原区間を下る。そして林間へ。登りの時のような冒険はしないで、1.5トラックをくだる。はじめのうちはヘアピンカーブをショートカットしたり、道沿いのオープンバーンを滑ることができたが、途中からはひたすら道をたどる。勾配と、雪質と、ステップソールの抵抗がたまたまちょうどいいスピードに調整してくれるが、スキーを操作する面白味はない。道がどこかわからなくなりそうな区間もあったが、なんとか秋にクルマを停めた標高680m地点に到着。ここからは車が通る道、除雪の痕跡もあるので迷う心配はない。すぐに廃屋群へ。倒壊した廃屋がないか見るが、来る時と変わらなかった。もちろん見える範囲は限られているし、誰かが入山してきた痕跡はない。来れば足跡で分かるはずだ。
 廃屋群を過ぎると勾配はほとんどなくなり、歩きとなってクルマへ戻る。
 帰り道は、国道482号線で人形峠、恩原高原、辰巳峠、佐治村と東に走り、千代川沿いの鳥取自動車道で鳥取へ。ラーメンを食べてから、日本海沿いに丹後半島を目指す。

■立木のない若杉山について
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 中国山地一帯に点在するたたら製鉄がここでも行われていたとのことで、その燃料として森林が伐採された。その後牧草地として利用されたらしい。少し前に鳥取を訪れた時に鳥取市中央図書館で読んだ本に記されていた。ただし、書名を忘れてしまった。
 今では登山道として利用されている1.5トラックは、その当時の作業道だったのかもしれない。

■大谷集落について
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 かつては三朝町立南小学校大谷分校があった('86に分校廃止)。日本海テレビ制作の「てっぽんかっぽん物語」('78年)、「てっぽんかっぽんの咲く分校」('80年)、「てっぽんかっぽんの詩~大谷分校の春~」('84年)という大谷分校や大谷集落を舞台にしたドキュメント番組が放送された。ちなみに「てっぽんかっぽん」とは「ふきのとう」のこと。
 '84年の放送で登場した小学生も今ではすでにアラフォー世代ということになる。その親は70歳前後と想像でき、おそらく今の大谷集落はそうした高齢者中心だと思われる。さらに数十年が過ぎるとおそらく廃村となり、冬場の除雪も行われなくなるように思われる。そうなると冬の若杉山は遠い山になる。

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