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2011/10/21

但馬御火浦

 アップダウンが激しい但馬海岸にあって香美町(旧香住)と新温泉町(旧浜坂)の境の但馬御火浦は、国道からそれて静かで険しい道が付けられている。クルマでは一度通り抜けたことがあるが、自転車では餘部から伊笹岬(香住崎)の灯台までピストンしたことがあるだけ。いずれも、15年以上前の話だ。
 今回はこの但馬御火浦を自転車で走り、山陰本線も利用しようという企画である。
 午後が空いている10月13日、丹後を出発。旧香住町内では自動車専用道路ができて一気に餘部へ。トータルでも丹後から70km弱を1時間余りだ。
 自動車道の終点まで走ってから少し東に戻って鎧駅へ。国道から小さな峠を越えないといけないので今まで訪れたことはなかったが、海沿いの小さな集落とホームから水平線が見える無人駅には、とてものどかな雰囲気がある。待合室には、訪れた人が書き込む落書き帳があった。
 インターネットの鉄道ファンのWebサイトにこの駅の写真が載せてあり、駅周辺にクルマを停められそうだったので、自転車は家から輪行袋に納めて積んできた。クルマから輪行袋とツーリングに必要な装備を下ろして一人ホームに立つ。程なく13時58分の列車がやってきた。計画通りである。
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 トンネルを抜けて餘部鉄橋へ。標高40mの空中散歩。下を走るクルマが小さい。鉄橋を渡ったら餘部駅。そのあとまた長目のトンネルを経て久谷駅。ここで下車。190円。今日のコースならば、鎧駅でなく餘部駅から列車に乗るのが普通だが、餘部駅は輪行には向いていない(詳しくは後ほど)のと、鎧駅を利用したかったのと、新しくなった餘部鉄橋を渡るため。
 久谷駅も、集落のはずれの小さな無人駅。西に傾いた秋の日差しがよく似合う感じだ。一緒に下りた高校生は列車が行ったあとホームから線路を渡って最短距離で集落へ。
 私は誰もいない待合室に入って、ここで自転車を組む。今日の自転車はクロスバイク。泥よけがないので分解組立や輪行袋の出し入れは折り畳み自転車と同じくらい手軽。ただ折り畳み自転車ほど小さくならないが、列車は空いているから問題ない。ベンチに座って出発準備を整えていると駅の前にパトカーが止まって、警官が下りてきた。「何をしているか」聞かれたが「見ての通り列車を降りて自転車で走り出す準備を整えている」のである。何でも「珍しく人がいるから来た」とのこと。監視カメラでもあるのだろうか。しかし、世の中物騒なのか、お巡りさんが暇なのか。列車を利用し、待合室を利用するだけで職務質問とは。
 気を取り直して出発。少しだけ国道178号線を西へ。クルマがうっとうしいが下りなのですぐ。久谷集落を抜けたら、右折。和田、赤崎集落方向へ。山陰本線の線路の盛り土の下をくぐるのだが、道路と川が隣り合ってトンネルとなっている。その名も「めがねトンネル」。国道をクルマで走るときに何度も見ていたトンネルを初めて抜ける。
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 のどかな秋の集落をぬけ峠へ。三尾トンネルを抜けると前方に海が広がる。そして足下には漁港と小さな集落。入り江を塞ぐような島は、大島というらしい。青く透明な入り江の中を漁船が行き交っている。
 とにかく、海までの距離に比べて高度の比が大きい。集落も漁船も小さく、周囲の断崖や島の巨大さが目立つ。一瞬、北海道の礼文島で桃岩トンネルを抜けたときに見える風景を思い出した。16年前、クルマで走ったときにも高い位置から小さな集落を見下ろした記憶はあるが、やはり自転車で来た今回の方が印象が強い。
 つづら折れの道を一気に急降下。写真を撮っているときに追い越した町営のマイクロバスが下の方で轟音を響かせている。
 小さな集落、三尾に下りたら今度は東に向かって海沿いの登りが始まる。港の上の高台は、入り江と大島の展望台。「御火浦」という看板が立つ。漁船を下りて上陸した漁師が港で立ち話をしていた。振り向けば壁のような山肌に今下ってきた道が貼り付いている。
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 三尾集落のはずれで法面と側溝の補修工事をしていた。そして、そこを通過したら「林道通行止」の看板が立っている。今年は、5月以降、大雨警報が何度も発令されあちこちで道路が傷んでいるが、今日走る路線の道路情報をチェックしてこなかった。全面通行止を知らせる看板には、「路面陥没」でなく「法面崩落」なので自転車は通れることを期待しよう。とにかく、先ほど下った絶壁を登り返すのは嫌だ。
 完全に集落は終わり、通行止めの道を走るクルマはなく、一人静かにペダルを回す。海沿いの絶壁を避け少し海から離れたところを行く道の登りはきつい。それでも、垣間見える海の景色や、色づき始めた山の色にいやされながらのんびりと行く。
 しばらく行くと土砂崩れの地点に到着。自転車を担いで乗り越える必要はなく、海側の幅1.5m程は土砂が届いていなくて倒木の下をくぐり抜けていけた。これでもう引き返す心配はなくなったが、登りはまだまだ続く。
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 一度、せっかくためた位置エネルギーを70m分ほど浪費する下りもあったが、伊笹岬(余部崎)の手前が最高地点。標高は300mをわずかに越えた。
 少し下ると白い灯台が木々の合間に見えた。そして一気に灯台へ。軽自動車が一台止まり、若いカップル。男の方がギターを弾いて、女の方がなんだかはしゃいでいる。明らかに私は邪魔者だが、せっかくここまで自転車で来たのだから一通り景色を見たり写真を撮ったりさせてもらわないことには立ち去れないのだ。
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 ウィンドブレーカーを着て、最後の下りへかかる。しばらく行くと御崎集落。険しい斜面に家々が貼り付いている。平家の落人伝説があるようだ。バス停がある。バスは、朝昼夕の3本。
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 さらに下って、余部集落と鉄橋が見えるポイントへ。18年前に岬まで自転車でピストンしたときにここから撮った写真がある。鉄橋は姿を変えてしまった。
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 集落に戻ったら自転車を止めておく場所を探す。結局、鉄橋下のパーキングスペースへ。そして徒歩で餘部駅へ。鎧駅までの楽しくない国道の峠道と、もう一つの峠道を走らず再び列車を利用する。
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 標高40mの餘部駅へはクルマの通れない細いみちをくねくねと登る。自転車で登っても楽しくない登り(後に下りはない)だし、輪行袋を担いで登るのはもっと苦痛だ。だから人間だけ列車で鎧駅に戻って、クルマで自転車を回収に来るのだ。この駅も待合室に落書き帳があった。ホームには私以外に女性が一人。鉄橋脇の駅から鉄橋の写真を撮っていると、向こうから話しかけてきた。京都市の嵐山の近くから来たという観光客だった。
 しばらく話をしていると、17時36分の列車がやってきた。さすがに昼間より運んでいるが、空席もある。鉄橋とトンネルを経て鎧駅までは140円。
 駅前にクルマを停めたから、自転車を乗せてくる必要はないのだ。鉄橋下で自転車をクルマに積んで帰路に就いた。

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